TATERU改ざん問題の本質を探る(中)
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創業10年でIPO、財務内容は健全そのもの
同社を創業した古木大咲氏は、福岡市のアパート販売会社に在籍している時に自らアイデアを出し、「ホームページから集客すればもっと売れる」を実践。ITと不動産をかけ合わせたビジネスを拡大したいという思いから、2006年1月に福岡市で起業した。フルキ建設の商号で設立された同社はこれまでに3度の商号変更を行ってきた。インベスターズ、インベスターズクラウドを経て、今年4月に現商号であるTATERUに変更された。
06年12月には名古屋、09年11月には東京、11年4月には大阪、12年4月には仙台に拠点を設けて業績を伸ばし、本社も福岡市から東京都へ移転。15年12月に東証マザーズ市場への株式上場をはたした(16年12月に東証一部へ市場変更)。
さらに、16年3月には不動産特定共同事業許可を取得し、4月からは不動産投資型クラウドファンディング事業を開始すると同時にIoT機器の開発・製造・販売会社、民泊事業会社を設立(連結子会社)し、積極的に新規事業へ取り組んだ。
業績は右肩上がりで推移。14年12月期に146億円だった売上高は17年12月期には670億円、経常利益は9億円から58億円にまで伸ばした。アパート用地は在庫をもたない仲介での売買がメインだったため、一部を除いて取得はしておらず財務内容は健全そのものだ。17年12月期から借入金が計上されたが、負債純資産合計に占める割合は4分の1以下、自己資本比率は44%を誇るほか現預金は総資産の45%を計上。着実な成長と健全な財務内容から、著名ファンドの投信に組み込まれるなどTATERU株は高い評価を得ていた。
蜜月だったTATERUと西京銀行
TATERUとタッグを組んだ西京銀行には、融資額を伸ばしたいインセンティブが大いに働いていた。山口県周南市に本店を構える西京銀行は、地元では山口銀行を傘下にもつ山口フィナンシャルグループに大きく遅れをとっており、広島銀行または山陰合同銀行との統合が囁かれるなかで、対抗策として度重なる増資や不動産融資の増加を実行。その両面でTATERUとは強固な関係性を築いていた。
18年3月末時点でTATERU(当時、インベスターズクラウド)は、西京銀行が発行する株式の18.18%を所有する大株主(優先株)であることがわかっている。さらに、17年4月以降締め付けが厳しくなっていたアパートローンも、TATERUのアパートに限り融資していた(東証二部上場Jトラスト(株)の子会社(株)日本保証の保証が条件)。
ここまで大きく報じられた結果、西京銀行はTATERU向けのアパートローンを完全に止める可能性は小さくない。その場合、右肩上がりを続けてきたTATERUの業績は大きく落ち込むだろう。アパート販売が収益の大部分を締めていた同社にとって、西京銀行の融資が成長の手綱になっていたのだ。業界関係者によれば、「TATERUのアパート事業計画が実態とかけ離れていたことが過去に問題となったため、福岡の某地銀とは取引できない状態が続いている」という。さらに、「ほかの銀行との取引も同様の理由から難しいだろう」という声も聞かれた。仮にTATERUのアパート販売がゼロになったとして、同社の足元の資金繰りはどのようになるだろうか。
(つづく)
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