2024年11月23日( 土 )

斜陽のパチンコ業界 苦戦が続くメーカーでは再編が加速(前)

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 日本における「庶民のカジノ」として、一大商圏を築き上げているパチンコ業界。業界を末端で支えている遊技愛好者数は近年減少が続いており、いまだ20兆円の市場規模はあるが、業界に必要不可欠な遊技機(パチスロ・パチスロ)をつくるメーカーは軒並み業績が悪化。戦後、日本の“大衆娯楽”に終焉が訪れようとしているのか――。

明暗分かれた上場メーカー

 株式を上場しているパチンコメーカーは2018年10月現在、7社。(株)ユニバーサルエンターテインメント(以下、ユニバ)、セガサミーホールディングス(株)(以下、セガサミー)、フィールズ(株)、(株)平和、(株)オーイズミ、(株)SANKYO(登記上の表記は(株)三共)、(株)藤商事。発表された直近の通期決算概要は以下の通り。

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 7社中、前期比増収増益をはたしたのはSANKYOと藤商事の2社のみ(【表Ⅰ】参照)。両社ともに、人気コンテンツを採用したパチンコ台が市場から高評価を受け長期稼働し、業績を牽引した。残り5社は全社減収となっている。最終損益が前期比で47億9,200万円の大幅増益となったフィールズでさえ、赤字からの脱却ははたせていない。はっきりと明暗が分かれた大手パチンコメーカー7社だが、異口同音に『規制強化』が業績に影響を与えた―または、今後の業績に影響をおよぼすと述べている。

 ここで言及する規制強化とは、18年2月に施行された「風俗営業などの規制および業務の適正化などに関する法律施行規則および遊技機の認定および型式の検定などに関する規則の一部を改正する規則案」(以下、改正風営法)のことだ。

《改正風営法のポイント》
 パチンコ:1回の大当たりで得られる出玉の上限2,400個⇒改正後 1,500個
 スロット:1回の大当たりで得られるメダルの上限300枚以上⇒改正後 300枚まで

 改正風営法の施行に備え、メーカーは早い段階から規制に対応した機種=「新基準機」の開発を余儀なくされたが、規制に対応していない機種=「旧基準機」がすぐにパチンコホールから撤去されるわけではない。パチンコホールは、ホール内における旧基準機の設置割合を段階的に減らしていき、最終的に21年1月末までに完全撤去すれば良いのだ。

 この3年間の時限措置を生かし、遊技者が勝ちにくい=遊技者に敬遠されやすい新基準機の導入を進めるのではなく、すでに相応のファンをもつ、一撃で大量の出玉・メダル獲得が期待できる旧基準機の再導入・増台に力を入れるホールは少なくない。1人でも多くの客を繋ぎ止めておきたいホールからすれば、当然の選択といえる。この結果、旧基準機が流通する中古市場は盛り上がりを見せたが、メーカーが売り出した新基準機に対する市場の反応は淡泊なもので終わり、15年には、倒産や事業撤退が相次いだ【表Ⅱ】。

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 こうしたホールの新台の買い控えは、メーカーの足元を大きく揺るがした。上場メーカー6社の年間販売台数【表Ⅲ】は、SANKYOと藤商事の2社を除き、軒並み前期比で10万台以上減少している。

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 メーカー界の雄、ユニバは、業績不振の要因について「国内事業において、強化された遊技機の改正規則の影響により、需要が大きく落ち込み、当初目標としていた販売台数や売上を達成できなかった」とコメント。メーカーにとって、規制強化に端を発した“旧基準機への回帰”が業績低迷の一因となったことは間違いない。

大手数社に重すぎる借入金負担

 規制強化により、魅力が再発見され勢いづく旧基準機と、最終的には導入・遊技しなければならないのに、そっぽを向かれる新基準機。販売計画が狂い、苦境に立たされる大手パチンコメーカー――。とくに、ユニバ、平和、オーイズミの3社は、減収が響き月々の有利子負債の返済負担が重くなっている。

 平和は、売上高1,327億6,500万円に対して、長短借入金が1,231億1,600万円あり、月商比率は11.12カ月(18年3月期)。オーイズミは、売上高111億1,900万円に対して長短借入金135億7,900万円、月商比率14.65カ月となっている(18年3月期)。最も返済負担が重くなっているのがユニバ。17年12月期は、決算月の変更にともない9カ月間の変則的なものになっているが、売上高685億4,600万円に対して、長短借入金1,031億8,300万円、月商比率は44.17カ月と、借入金への依存度が非常に高くなっている。

 ユニバは「経常利益以下を黒字化させるべく、推進していた含み益の実現をともなうマニラでの一部土地売却が今期(18年12月期)にずれ込んだ」と話しており、相応の返済原資確保が見込める状況にあるが、同社の元取締役会長 岡田和生氏との裁判(カコミ参照)、同氏逮捕にともなう海外で展開しているカジノ関連事業のライセンス失効の可能性といった火種がくすぶっている。

(つづく)
【代 源太朗】

(後)

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