好きやろうもん!高校ラグビー~「花園」目指してヒガシと筑紫高が決勝進出
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ヒガシが19年連続で県大会決勝へ
今年もやはり安定の強さを誇る両雄が、覇を決する舞台に立つことになった。高校ラグビーの日本一を決める「花園」(第98回全国高校ラグビーフットボール大会)の福岡県代表を決める決勝戦に、私立東福岡高校(19年連続29回目)と県立筑紫高校(2000年以降は11回目)が進んだ。決勝戦は10日、博多区の博多の森陸上競技場で行われる。
県内のラグビー関係者が、「優位は揺るがない。地力にはかなり差がある」と太鼓判を押すのはやはり、全国優勝6回を誇る常勝軍団「ヒガシ」(東福岡高)だ。
ヒガシの強さは高校生離れした体格とフィットネス(身体能力)を基盤に、高校日本代表候補にも選ばれる技術の高い選手を数多くそろえる人材の豊富さにある。もはや「勝って当たり前」というプレッシャーと驕りに足元をすくわれること以外の弱点も見当たらず、まだ10代の子どもたちが言葉通り、「最大の敵は自分自身」という異次元の戦いに挑んでいる。
自主性重視の練習方法は規律を重視する他校と比較されることも多い。ラグビーで重要となる身体能力(フィットネス)を向上させる科学的トレーニングに加えて、ラグビー関係者がヒガシの強さの秘密として指摘するのは、「圧倒的なリクルート力」だ。
山笠に象徴される「勇壮さ」を貴ぶ県民性、柔・剣道などの武道が盛んな「荒っぽい」土地柄も関係するのか、福岡県は全国屈指のラグビー王国として知られている。小学生にラグビーを教えるラグビースクールの数は24で全国有数、ジュニア(中学生)チームも今夏の全国大会で「かしいヤングラガーズ」が準優勝するなど層が厚く、県内ラグビー関係者は、「県民気質に、ラグビーの格闘技的要素がうまくマッチしたのでは」と話す。トップリーグの「コカ・コーラレッドスパークス」や「宗像サニックスブルース」が本拠地を置いていることから、子どもたちが選手としてのキャリアをイメージしやすく、ラガーマン育成には理想的な地域だ。
早い子どもは小学校に上がる前から楕円球に触れ始め、小中9年間を通じてスキル(技術)を磨き、その中のトップ層が「仕上げ磨き」としてヒガシに進学する。ラグビースクールの練習は主に週末の1~2日間だけだが、意識の高い子どもたちは平日にサッカーやバスケットボールの別クラブに所属してハンドリングやステップを磨き、あるいは柔道教室に通って足腰を鍛えている。熱心な保護者いわく、それらはすべて「ラグビーの技術を上げるため」だというから恐れ入る。福岡市内の名門クラブ・草ヶ江ヤングラガーズに通う小学5年生が描く夢は、「中学で日本一になり、シュウユウ(修猷館高)のラグビー推薦がダメならヒガシで花園に出て、早稲田からニュージーランドに留学する」と、驚くほど具体的だ。
ヒガシのラグビー部関係者は中学生の試合を頻繁に視察、あるいは全面人工芝の豪華なグランドを中学生の試合に貸し出すなどして、次世代の布巻(峻介/2011年卒→早大/日本代表)や藤田(慶和/2012年卒→早大/日本代表)を探し出すことに労をいとわない。毎年、夏の大会が終わった時期あたりから、県内ラグビースクールでは「~スクールの~番に声がかかった」など、誰がヒガシ首脳陣のお眼鏡にかなったのか噂が飛び交うのが恒例だ。さらに選手の供給源は県内にとどまらず、3連覇(2009~11)を成し遂げた頃から「日本一の環境」を求めて全国からスーパー中学生たちが結集するようにもなった。
「不死鳥vs海神」で、福岡県のレベルがさらに向上
しかし、ラグビー関係者の間では「フェニックス」(不死鳥/東福岡高ラグビー部の愛称)の黄金時代を終わらせる存在として、ある高校の名前があがるようになっているという。東海大学付属福岡高(宗像市/2016年に付属第五高校から校名変更)のラグビー部、「ポセイドンズ」(海神)は2011年に創部された新しいチームで、全国制覇5回の名門・東海大仰星高校(大阪府枚方市)で部長・コーチを務めた津山憲司氏が校長として赴任したのを機に創部された。母体であり大学ラグビーの強豪でもある東海大学のコネクションも最大限にいかして強化を進め、急成長を遂げている。とくに、チームの柱として迎えたトンガ人留学生のインパクトは抜群で、圧倒的体格差を武器に複数人を引きずりながら突進する姿は、対戦校のトイメン(対面/相手チームで相対する選手)を震え上がらせている。
「打倒ヒガシ=全国制覇」を虎視眈々と狙う東海大福岡。フェニックス時代の終わりを見越して同校への進学を決める中学生ラガーも出始めており、「早ければ3年以内には、決勝戦でこの2校の対戦が見られるのでは」(高校ラグビー関係者)という声もあがっている。
はたしてフェニックスの1強時代は終焉を迎えるのか。
「留学生の存在は確かに脅威だが、それだけで勝てるほどヒガシのラグビーは甘くない。留学生の突進力だけに頼るのか、あるいはそこを起点に展開ラグビーにもっていけるのか。ヒガシのスピードに対応できるディフェンス力強化も欠かせないが、いずれにせよ高い身体能力を持った子どもたちを集めて徹底的に鍛えないと、ヒガシには勝てないでしょう」(大学ラグビー関係者)
鍵はやはり、実績と能力のある中学生をどれだけ集められるかにある。東海大福岡は全国から才能を集めるためにラグビー部専用の寮を設けているが、まずは地元福岡のタレントをどれだけヒガシから奪えるのか、まさに「ブレイクダウン」(ボールの奪い合い)の強さにチームの浮沈がかかっている。そのためには県内ラグビースクールと緊密な関係を築くことが必要だが、さすがにしばらくはヒガシの優位は揺るがないだろう。
「不死鳥」に「海神」というライバルが登場したこと、さらに筑紫高や福岡高、修猷館高、小倉高、東筑高などの県立古豪がひしめきあう状況が、県内高校ラグビーをレベルアップさせることは間違いない。さて、「ラグビー版 修羅の国」の今年の〈てっぺん〉は誰か、決戦の笛が鳴る。
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