【現地レポート】アメリカの民主主義が問われている~玉城沖縄県知事が訪米して講演(後)
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現地時間11日、沖縄県の玉城デニー知事が訪米してニューヨーク大学で講演会を開催した。講演後に行われた質疑応答で、玉城県知事は改めて、辺野古新基地計画に反対する意向を明らかにしている。(ニューヨーク/横田一)
(講演会要旨の続き)
米軍にとって要石(キーストーン)である沖縄が猛反発を生み出す――パンドラの箱
第2次大戦後、アメリカは沖縄を「太平洋の要石」キーストーン(keystone)と呼びました。米軍の軍事戦略において沖縄は太平洋から東アジアへの鍵であるという意味です。しかし、沖縄を民主主義からも法律からも例外的な存在とし続けるならば、その鍵の石は激しい反発をする「パンドラの箱」の鍵(key)に変わってしまうかもしれません。そうなれば、日米両国と沖縄県民の間に修復不可能な亀裂が生じてしまうでしょう。
私は沖縄県知事として、米軍基地が駐留する地域の民意を尊重するよう呼びかけたいのです。沖縄県民は日米両政府から矛盾を押し付けられましたが、その矛盾を「チムグクル」(真心)で包み込み、多様性へと変えてきました。その一例となるのが、沖縄県南部の糸満市にある「平和の礎」(沖縄戦で亡くなった約20万人の名前が、国籍を問わず刻銘)です。これは沖縄の多様性を反映している大切な事業の1つです。
多様性を民主主義の力へ
アメリカではおそらく、沖縄の問題があまり報道されていません。あるいは、知られていない現実があるかもしれません。私は、このことをとても不思議に思います。なぜなら1945年の沖縄戦から現在に至るまで多くのアメリカ人が沖縄に駐留してきたからで、沖縄とアメリカの関係は非常に深いといえます。この深い関わりの中から私も生まれてきたのです。沖縄のことを良く知っているのは、政治家よりもアメリカの元軍人や軍属、その家族の方たちです。沖縄の多様性というのは私のような存在であり、米兵と結婚して渡米した、いまアメリカにいる女性たちであり、そして親から沖縄の魂を受け継いだ子どもたちであり、そして沖縄に触れてきた数多くの軍人、軍属なのです。私はこの多様性を、誇るべき民主主義の力に変えて欲しいのです。
米軍が沖縄に来て73年になります。米軍はせめてキーストーンである沖縄の声ぐらいは聞くという敬意を払ってもらいたいと思います。アメリカは沖縄の問題を「日本国内の問題」に閉じ込めていますが、実は沖縄のなかでもアメリカの民主主義が問われているのです。米国政府を始め沖縄に駐留したアメリカ人、そして、そのご家族の方々にも沖縄の問題を自分の問題として考えてほしい。膨大な数のアメリカ人が海外の基地に駐留している現実からいえば、アメリカ軍の基地問題は国内問題と同等に扱うべきであり、アメリカの民主主義も国境を越えるべきではないでしょうか。
未来に残すべき豊かな自然環境と互いの友情を将来の子どもたちにつなげるために、「正しい」と心から信じる声と行動が必要です。お互いの沖縄のために立ち上がって、ぜひ行動してください。アメリカの民主主義の誇りを沖縄にも届けるように、どうぞ要求してほしい。沖縄県民に残された時間はあまりありません。しかしみんなが立ち上がれば変化が起こります。変化が早く大きく起きるほど、状況は大きく早く変わります。日米両政府が辺野古の新基地建設を断念するまで、みんなで働きかけましょう。
<記者との質疑応答>
質疑応答で軟弱地盤問題について説明
――「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)で合意された海上計画から、陸上計画への変更についての見解は。
玉城知事 できるだけ早く(沖縄県内の米軍基地を)整理統合をすべきだが、例外が普天間飛行場の移転問題。SACO合意は、辺野古の沖合に海上フロートのようにして撤去可能なかたちとして始まった。当時の沖縄県知事もSACO合意を認めていたが、2つの条件付で辺野古(海上)移転を認めていた。1つ目が、軍隊つまり海兵隊と民間が共用できる空港にすること。もう1つはそれを15年で沖縄県に返還するという2つの条件です。しかし、そこから紆余曲折して、いろいろな利権が絡んだ末に、現在の辺野古の沿岸を埋め立てたV字型滑走路計画に変わってしまった。したがって、「撤去可能」のSACO合意から離れて、未来永劫まで国が使いたい放題の基地をつくるというのが今の辺野古新基地の計画ですので、この計画を認めることはできません。
8月31日に、沖縄県は日本政府と防衛省に対して埋立承認の撤回、取り消しを法律に基づいて正式に出しています。そのなかには、サンゴの移植が行われていないこと、ジュゴンの餌となる海草の移植が行われていないこと、そして海底には軟弱な地盤があって、しかも軟弱地盤の下には活断層まである問題が明らかになったことなど、費用の面でも工事期間の面についてもまったく説明されていないことを問題にあげています。計画の全体像が明らかになっていないので、その費用を出すことができません。そのなかには沖縄県知事の許可が必要な手続きもあります。今後、さらに問題が起こってくることは容易に想定できますが、私は、日本と米国と沖縄の三者間で対話を行って「辺野古新基地計画は止めるべきである」ということを明確に伝えるべきだと思っています。
――佐喜真・宜野湾市長(当時)が訪米した際にアメリカ政府次官補クラスの方が会ったのに対して、翁長前知事(当時)が訪米した時は要人と会えなかった。外務省と防衛省に面談のセッティングを頼んだのか。在米メディアにアプローチをしているか。
玉城知事 今回の訪米にあたっては外務省や防衛省にお願いをしている。会えることになっているが、どのクラスの方かは不明です。国民に声を届けるのは重要。在京メデイアからかなりの取材を受けて、しっかりと載せていただいている。いろいろな方のドアをノックしたいと思う。
(了)
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