2024年11月14日( 木 )

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(6)~別次元に入った「儲け」集積のゼネコン業界(前)

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 福岡県下ゼネコン64社、マンションデベロッパー20社、計84社の特別レポートを作成した。そこで判明したのは、この5年間蓄積した収益金額が半端ではなく別次元の蓄えをしたということである。恐らくこの50年間の比較でいえば最高の「儲け環境」が続いているということだ。ただ疑問は残る。建設業界が潤えば“銭”が社会全体に廻って景況感が改善されるものだが、今回はその“匂い”すらないのだ。

銀行は泣きたい

 一昔前、金融機関の貸出先の主力はゼネコン・不動産業者だった。とくに地方に行くほどその傾向が強かった。ところがどうだ!!ランキング64社中、無借金企業が18社あるのである。加えて銀行との付き合いで借入している企業もあるが、このなかで実質無借金企業が7社存在しており、合計では25社に達する。4割が借入依存しなくて自己資金で営業していることがわかる。

 あと2期、業績が持続できれば半数の企業が無借金企業になるだろう。毎期の利益の積み立てが加算されて自己資本率が50%を超える企業が半数に迫るのではないか!!支払い面も緩和され、手形を発行しない企業が増加している。こういう状況は金融機関側からすると面白くないだろう。面白くないレベルを超えて死活問題レベルとなる。建設業界の貸出量を穴埋めできるほどの新規開拓業界はない。それは地方に行けば行くほど顕著になる。

いかなる事態にも対応・香椎建設

 香椎建設(株)(本社・福岡市東区)は過去、地場ゼネコンのトップクラスに迫る勢いがあった。2017年9月期の完工高は15億8,000万円前後だ。その2期前も12億円、15億円と大きな動きはない。若手企業が50億円突破する例も珍しくなくなった。この数字を眺めつつ「香椎建設は精彩を失った」と論評する人は業界に対する無知を露呈するようなものだ。

 建設業界の経営者たちは、平成の30年間、企業存亡がかかるほどの辛い経験をしてきた。とくに1996年前後、2008年前後には建設業の倒産ラッシュが続いた。だから読みの深い経営者は、リスクヘッジの先手を打つのである。「近々、またバブル弾けることになる。今後、招来する危機に常に対応できる戦略の構築が欠かせない」と肝に銘じているのである。

 その先駆者が香椎建設・城戸幸信社長である。100年の歴史を有する同社だが、地元に存在感を誇示できたのは城戸社長の経営才覚によるもので、東区を中心に業績を伸ばしていった。

 実弟が起こした作州商事とタイアップして受注量を飛躍的に伸ばした時期もある。城戸社長もさまざまな体験を踏まえて「企業を持続するには、いかなる組織形態が重要なのか?」を模索し続けたのだろう。自身の年齢も考慮しながら「いかなる事態にも対応できる組織」を目指し、無理な受注を追い求めることを中断した。

 決算書をチェックしてみよう。自己資本率は60%に迫り、現預金を18億円積み上げている。借入金は3億円あるが、見合預金でいえばたいした負担ではない。この内容であれば受注が半減しても、企業存続は可能である。また廃業の決断をするのも容易だ。債権者に迷惑をかけずに「孫の代まで飯が食える」資産が残る。

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(つづく)

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(6・後)

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