石油から水へ 今こそ『水力(ウォーター・パワー)』を味方につける(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
我が国では官邸が主導する対米、対露、対中国、対アジアなど外交において、成果が上がるどころか八方ふさがりの状況にあるなか、国内では不安視する声が多数であるにも関わらず、改正水道法が成立した。この背景の1つに世界で激化している水ビジネス―水資源争奪戦がある。
八方ふさがりな“官邸主導外交”と時間を浪費する「ネクラ国会」政治、経済、技術の分野を問わず、「創造的破壊」が求められる時である。アメリカが内向きになり、世界の警察官の座を放棄する一方で、中国はロシアと連携を深め、「一帯一路」と「ユーラシア同盟」の一体化を進める意向だ。朝鮮半島においても南北の融和が統一に向かう可能性も間近に迫る。そうした地政学的な大変動を見越して、世界各国が水面下で合従連衡の動きを加速させている。
ところが、我が国では安倍首相が「地球儀を俯瞰する外交」と称して世界各国を飛び回っているが、注目に値するような成果は上がっていない。アメリカからは「あれを買え、これを買え」と言われ、イージスアショアやF35戦闘機を押し付けられ、「ノー」といえない日本丸出し状態である。中国とは一帯一路に参加するのか、しないのか相変わらず煮え切らない態度に終始している。
ロシアとの交渉においては、平和条約と領土問題に関し、「自分の任期中に解決する」と時間を限ってしまい、相手を有利な立場に立たせても平気。北朝鮮に関しては「首脳会談で拉致問題を解決する」と威勢は良いのだが、まったく相手にされないまま。それやこれやで、鳴り物入りの“官邸主導外交”は八方ふさがりに陥っている。
国会の状況はといえば、与野党ともに、精気を失ったまま。憲法改正論議も不完全燃焼で先送り。外国人労働者問題に関しては強硬突破したものの、根本的な少子高齢化による人手不足問題の解消にはメドが立たない。IT、人工知能、ロボット技術がこれだけ進んでいるわけだから、外国人を無理やり呼び込み、反日感情を植え付けて帰国させるより、ロボットの有効活用を真剣に考えるべきではないだろうか。
とはいえ、これだけIoTを生かした「第4次産業革命」が話題となっていながら、相変わらず口利き疑惑とかパソコンの使えないオリンピック担当大臣の資質問題などに貴重な時間を浪費している「ネクラ国会」である。
日本のグランド・デザインを描く努力がないままでは、世界を相手にした大競争時代を勝ち抜くことは難しい。ここは、じっくりと足元を固め、ウサギの耳のごとく、遠近双方の情報を吟味したうえで、日本の特質を生かした大胆な飛躍を遂げたいものである。日本にはモノづくりで世界をリードしてきた蓄積もあれば、自然とともに生きる国民的価値観が根強く息づいている。
改正水道法成立、日本の水は大丈夫か
数年前、日本は国連が定めた「国際森林年」を盛大に祝ったものである。これは、世界中の森林の持続可能な経営・保全の重要性に対する認識を高めることを目的としたものであった。いうまでもなく、森は水がなければ育たない。一方で、森は水を育てる働きをしている。
要は、森林と水は切り離せない関係にあるわけだ。日本は周囲を海に囲まれた「海洋国家」であると同時に、国土の75%が森林に覆われている「森林大国」でもある。森林の下には水源が眠っている。まさに「宝の山」といっても過言ではない。
そこで今回は、日本が抱える水問題を考えてみたい。なぜなら、自然の恵みである水と、それに関連した技術の蓄積、そして水を敬うライフスタイルこそが、世界の模範となり、同時に日本をジャンプさせるパワーを秘めているからである。折しも、2018年12月、日本では水道事業の在り方を大きく変える可能性を秘めた「改正水道法」が可決、成立した。自治体が民間事業者に水道事業の運営権を売却することが可能となる。民間の経営ノウハウを導入し、コスト削減を目指すという。
はたして、期待通りの成果が得られるのだろうか。実は、世界のウォーターバロン(水男爵)と呼ばれる水企業は各国で水源地を押さえ、水利権を買収し、水道事業から大きな収益を上げることに血眼になっている。「水と安全はタダ」という恵まれた環境に安住してきた日本にとって、海外の水企業の仕掛ける水利権ビジネスはかつてない危機をもたらす恐れがある。
(つづく)
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