2024年11月29日( 金 )

金正恩氏のソウル訪問はいつ実現するのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 2000年6月、金大中大統領が韓国の大統領としては、はじめて訪朝し、史上初の首脳会談を行った。その時、金大中大統領の説得で、金正日総書記は「適切な時期に(韓国を)訪問する」と約束したが、それは実現しなかった。盧武鉉大統領も2007年10月に平壌を訪問し、第2次南北首脳会談が行われたが、この時も金正一委員長のソウル訪問は実現されなかった。

 それでは、今回のソウル訪問はいつ実現されるだろうか。当初韓国と北朝鮮は今年の秋の南北首脳会談で非核化のためのロードマップを作成し、その後、年末には米朝首脳会談を開催し、その場で終戦宣言もしくは平和宣言をする計画だった。しかし、米朝間の対話に進展はなく、行き詰まっている。そのような状況の中、韓国政府は、はけ口をつくろうと必死である。金委員長のソウル訪問は、具体的な成果がなくても、北朝鮮が今までとは違うということをアピールできれば良いと韓国政府は思っているようだ。

 金委員長のソウル訪問に対する世論調査では、「朝鮮半島の平和に役立つので歓迎する」という回答が61.3%だった。一方、「北朝鮮の偽装平和攻勢にすぎないため反対する」という回答は31.3%だった。しかし、韓国国内だけでなく、北朝鮮側でもソウル訪問を懸念する向きがあるようだ。韓国の保守政治家だけでなく、軍人出身、北朝鮮から脱北した人たちなど、北朝鮮に恨みをもっている人たちが存在しているからだ。

 実際、金委員長のソウル訪問をめぐって、保守陣営と進歩陣営の意見対立は激しくなっている。金委員長の訪問で引き起こされる問題も少なくない。金委員長がソウルで予期せぬ警護の事故に遭遇することも北朝鮮内部では懸念されている。

 韓国政府は、ひそかに金委員長の年内訪問が実現されることを期待し、その時期は12月半ばころになることを想定していたようだ。ところが、北朝鮮は米朝の関係に何か進展がない限り、年内訪問は厳しいという返事をしたようだ。外交筋によると、北朝鮮ではソウル訪問に向けて実務レベルの準備は何もしていないという。米国は強硬姿勢を崩さず、韓国と北朝鮮がソウルで会談することには同意しても、非核化の進展がないと、経済制裁は解除しないというスタンスである。

 一方、北朝鮮は中国とも意見調整をしながら、むしろ韓国政府に北朝鮮に代わって北朝鮮の立場を代弁してくれることを強く望んでいる。中国とロシアは、自国の問題が優先で、この問題で下手なことをして、米国との関係がこじれるのを避けようとしている。北朝鮮が生き残る道は、経済制裁の解除と、経済開放政策であるが、それが非核化と密接につながっているため、非核化に真剣に取り組まないといけない。金委員長のソウル訪問は年内には難しく、来年にもち越されるかたちとなった。

(了)

(前)

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