5G時代の到来とその主導権争い(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
それでは、通信技術はどのように発達してきたかを簡単に振り返ってみよう。第1世代の通信技術はアナログ方式の無線通信技術で、音声通話だけが可能だった。第1世代の技術はサービスの利用料も端末も高く、それほど普及することはなかった。第2世代の通信技術は音声通話だけでなく、ショートメッセージ、ショートメールなどのデータサービスが可能になったのが特徴である。
第2世代の通信技術には、GSM方式とCDMA方式があった。その当時の世界の主流はGSMであったが、韓国は通信技術の遅れを挽回するため、米国のクアルコムが開発した技術である後発のCDMA方式を選択した。韓国はクアルコム社の協力を得て、端末、通信機器の開発にも成功し、1996年に世界初のCDMA方式の通信サービスを商用化することになる。実はこれをきっかけにして、韓国のサムスン電子やLG電子は、携帯電話の分野で世界的な企業に成長できるようになったのである。しかし、5Gで中国企業が先行するようになると、韓国企業は危機である。その兆しはすでに表れており、中国の端末メーカーが躍進している反面、韓国メーカーは市場でシェアを落としている。
第3世代の技術は、GSM方式がCDMA方式の良さを吸収したW-CDMAである。映像通話などが可能になるほど、データの通信速度が向上されたのが大きな特徴である。第4世代は現在サービスが提供されているLTEである。
それでは、今後商用化を予定している5Gは、現在のLTEと比較すると、どのような違いがあるだろうか。第一は通信スピードの違いである。5Gは最大スピード20Gbpsで、体感スピードでは最低でも100Mbpsである。LTEと比較すると、最大で20倍、最低でも10倍はスピードが速くなる。
たとえば、2GBの映画を1本ダウンロードするとしたら、LTEなら16秒で、5Gなら0.8秒である。第二は応答スピードが速くなる点である。LTEに比べ、応答時間は10分の1になる。応答スピードが速くなると、ゲームなどをやるときに、リアルタイムでの操作が可能になって、ゲームがもっと楽しくなる。とくに、遠く離れたところから患者の診療や手術をやるような遠隔医療の場合、応答のスピードは、人命にかかわる大事な問題になる。
第三は、超連結性である。センサーの発達で、IoT時代の到来が予想され、機械と機械が通信する時代になりつつある。5Gはこのように多くの機器がお互いに通信をするのに適した通信技術でもある。
5Gは無線通信だけでなく、自動運転、VR、ゲーム、クラウドサービス、遠隔医療など多くの分野に影響を与えるコア技術である。「5Gを制する国家が世界を制覇することになる」と言っても過言ではない。だから各国は5Gで世界をリードするため、しのぎを削っているのだ。
今まで通信の世界をリードした米国をはじめ、次世代では巻き返しを図ろうとする中国、CDMAでIT強国となった韓国、失われた20年を挽回しようとする日本など、各国は5Gの技術開発に全力を注いでいる状況である。
(了)
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