2024年11月24日( 日 )

安倍政権「サンゴ移植フェイク発言」を フェイクニュース取材指揮の『琉球新報』編集局長が批判

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国土破壊違法集団と化した自民党を率いる
安倍首相が、NHK日曜討論でフェイク発言

 1月6日のNHK『日曜討論』が全国の視聴者に伝えた「安倍首相のサンゴ移植フェイク(事実歪曲の放送法違反)発言」に対して、「事実を誤認して発言」といち早く指摘したのは地元紙の『琉球新報』だ。2日後の8日、「辺野古埋め立て 首相が『あそこのサンゴは移植』と発言したが…実際は土砂投入海域の移植はゼロ」という見出しで、次のように報じたのだ。

 「(番組で)安倍首相は『土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している』と述べたが、現在土砂が投入されている辺野古側の海域『埋め立て区域2―1』からサンゴは移植していない。埋め立て海域全体では約7万4千群体の移植が必要だが、7日までに移植が終わっているのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみにとどまっている」

 「首相は『砂浜の絶滅危惧種は砂をさらって別の浜に移す』とも発言した。沖縄防衛局の事業で、貝類や甲殻類を手で採捕して移した事例はあるものの、『砂をさらって』別の浜に移す事業は実施していない」

 事実誤認のフェイク発言を公共の電波を使って発信することは、放送法の「報道は事実を曲げないですること」に違反するのは明らかだが、この琉球新報の第一報をすぐに菅(義偉)官房長官にぶつけたのが、『東京新聞』社会部の望月衣塑子記者だ。8日午前中の会見で、こう問い質したのだ。

――首相は6日のテレビ番組で土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植していると述べられましたが、土砂投入されている辺野古側の海域、埋め立て区域2の1からはサンゴは移植していないとして、一部報道が首相は事実を誤認して発言したと報じました。政府の現在のサンゴ移植の現状認識を改めてお聞かせください。

菅官房長官 環境監視等委員会の指導や助言を受けながら適切に対応しているということでありますから、まったく問題はありません。

――報道では、埋め立て海域全体では7万4千群体の移植が必要だが、移植が終わったのは別海域の9群体のみにとどまるとしております。玉城知事は昨日、ツイッター上で「総理、それは誰からのレクチャーですか。現実はそうなっていません。だから私たちは問題を提起している」と反論されました。事実の誤認ないし説明不足である場合は、改めて政府として見解を出すつもりはないのでしょうか。

菅官房長官 「報道によれば」に答えることは政府としてはいたしません。どうぞ、報道に問い合わせをしてほしいと思います。

 フェイク発言の訂正も謝罪もしようとしない安倍政権に対して、琉球新報は翌9日付の社説で「首相サンゴ移植発言 フェイク発信許されない」と銘打って批判した。そこで、安倍首相フェイク発言追及の先陣を切った琉球新報の普久原均編集局長に緊急インタビューした。

――日曜討論での安倍首相のサンゴ移植フェイク発言について

菅官房長官は、沖縄県知事選で
「携帯料金値下げ」のフェイク演説

普久原氏 総理が事実と違うことを発言し、公共の電波を通じて発信して、事実と異なることを国民の意識に刷り込むことになる。それは、非常に残念なことだと思う。しかも、その場で(野党国会議員が)反論する機会が与えられなかった。

――「日曜討論」と言いながら、安倍首相の単独インタビューを一方的に流す内容になっていた。野党の国会議員が横で聞いていて、すぐ反論できる討論形式ではなかった。

普久原氏 誰も反論できずに、安倍首相の事実誤認発言を国民の意識に刷り込むことになった。これは非常に由々しき問題だと思う。

危機迫る辺野古新基地予定地周辺
(大浦湾)の世界的に貴重なサンゴ

 先の琉球新報の社説は、フェイク発言をそのまま流したNHKの対応も問題視していた。「今回、もう1つ問題があった。事前収録インタビューであるにもかかわらず、間違いとの指摘も批判もないまま公共の電波でそのまま流されたことだ。いったん放映されると訂正や取り消しをしても影響は残る。放送前に事実を確認し適切に対応すべきだったのではないか。放置すれば、放送局が政府の印象操作に加担するかたちになるからだ」(8日の社説)。

――琉球新報の社説では、NHKが事前になぜ事実関係をチェックしなかったのか、討論番組形式ではなくて野党が反論できないのであれば、NHKが放送前に事実確認をして、安倍首相に「明らかに事実と違います」と訂正を求めないといけなかったと問題提起しています。

普久原氏 NHKの対応も問題ですが、安倍首相が事実誤認のフェイク発言をしたのは、国民に誤った事実認識を意図的に刷り込むのが目的だったのではないか。“確信犯”だったのではないか。それは、民主主義社会としていかがなものかと思う。民主主義社会は民意に基づいて動く。その民意を事実誤認で誘導しようとするのはあるまじきことだと思う。国民にありのままの事実を伝えて、事実に基づいた判断を仰ぐべきであって、意図的かどうかは断定できないが、明らかに事実と異なることを国民の意識に刷り込んだ上で判断を仰ごうとするのは、民主主義の手法としても完全に間違っている。

――独裁国家や戦前の日本ならいざ知らず、民主主義国家ではありえない手法だと。

普久原氏 事実とは異なるプロガンダ(政治的意図をもつ宣伝)で世論を誘導することが横行する独裁国家であるならいざ知らず、民主主義国家の総理としてはあるまじき行為だと思っています。

――埋立工事を進める防衛省沖縄防衛局が「(安倍首相がサンゴ移植をしたと発言したエリアは)土砂投入をした埋立エリアとは限らない」という言い訳をしています。

普久原氏 辺野古土砂投入の映像がスタジオで流れたのを受けて安倍首相が発言をしたのですから、言い訳として成り立っていないです。非常に不誠実な対応です。

――玉城デニー知事はツイッターで反論しましたが、防衛省の役人と安倍首相が一緒になって世論誘導をしようとしたように見えます。

普久原氏 そう疑われても仕方がないと思います。

 安倍首相のフェイク発言の事実確認を怠り、そのまま右から左へタレ流したNHKにも聞いてみた。

Q1:8日付琉球新報が事実誤認と指摘しているが、NHKの認識はどうなのか。
Q2:事実誤認と認識した場合、訂正文の発表や訂正放送をする予定はあるのか。
Q3:事実誤認の首相発言を放送したことについての経過、検証の予定について。

 8日に送った3つの質問に対してNHKは9日、こう回答した。

 「番組内での政治家の発言について、NHKとして答える立場にない。また、他社の報道についてはコメントしない」(広報部)。

『琉球新報』の普久原均局長

 「皆さまのNHK」を標榜する日本最大の放送局は、いまやフェイク発言を恥じらいもなく口にする安倍政権の印象操作に加担する「官邸のNHK(現代版大本営)」に変貌したに等しい。「A級戦犯だった岸信介元首相が墓場から蘇って孫の安倍首相に乗り移り、70年ぶりに渋谷に復活した“現代版大本営”から嘘八百を発信し始めた」という、オカルト映画のような悪夢の光景さえ浮かんでくるほどだ。

 しかし『美しい国へ』(文藝春秋)を出版した安倍首相率いる自公政権が、美しい辺野古の海をぶち壊そうとする“国土破壊違法集団”と化し、その実態を隠すために事実歪曲の政治的宣伝(プロパガンダ)をした放送法違反の疑いが濃厚であることは、紛れもない事実なのだ。

【横田 一/ジャーナリスト】

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