【人生100年時代に向けて】有事の保証からリスク回避へと大きく変わる日本の民間保険!(前)
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2018年12月5日、「人生100年時代」を提唱し、世界の健康観・人生観を大きく変えたと言われる『LIFE SHIFT』の著者、リンダ・グラットン教授が東洋経済新報社の招へいで来日し、講演を行った。「人生が100年という時代に入った現在では、もしかしたらひと昔前の人に比べると、1日が30時間であったり、1週間が9日であるような感覚ではないかと思う。70歳、80歳になっても当たり前に働ける時代がすでに来ている」とグラットン教授は述べ、さらに、「人生100年時代を生きていくために、重要なコンテンツは有形資産と無形資産。有形資産は言わずと知れた貯蓄や不動産だが、一方で無形資産は社会性や活力、そして健康。とくに「健康」はすべての原点になる」とも述べている。
さて、人生100年時代では、寿命が今後100歳前後まで伸びるにあたって、今まで個人の問題とされてきた人生設計は今や国家的、全世界的な課題であり、人生100年時代を生き抜くには、個人のみならず企業や社会、国家の仕組みに大きなパラダイムの転換が必要であると提唱されている。
従来の人生ステージでは、高校・大学を卒業するまでの教育を受ける期間、その後65歳前後までの仕事をする期間、そして定年後余生を過ごす期間という3つのステージが用意されていた。しかも、これらの人生のステージは一方通行で逆戻りはできなかった。
一方で、人生100年時代では、新たに3つ人生ステージが加わる。
①自分の人生を考え、知識やスキルをリカレント教育などで再取得するステージ。
②仕事などの生産的な活動に、組織などに雇われず個人の立場で社会に携わるステージ。
③それらの活動を同時並行で行うステージ。社会に出てからのステージにこの新たな3つのステージが複雑に関係することによって、時空的にも内容的にも双方向性のステージ構成に変化する。一度引退して、学び直した後に再度現場に復帰することも可能であるし、40歳代から企業で週3日働きながら、残り2日は自分で別の仕事をもち、休日は地元で専門分野を生かして子どもたちにボランティアで勉強を教えるといったようなライフスタイルも十分可能になる。
『LIFE SHIFT』に引用されている研究では「2007年に日本で生まれた子どもは、半分の確立で107歳まで生きる」とある。すでに、50年前の昭和の時代と比較しても同じ60歳代でも外見や身体能力、さらには精神的な側面でも大きく変わっていることに気が付く。
アニメのサザエさんに登場する磯野波平は当時の設定で54歳。現代では現役バリバリの役付きサラリーマンだ。海外ではジョニー・デップやブラッド・ピットが同年代となる。一方で、その妻である磯野フネは52歳の設定。女優の山口智子さんや沢口靖子さん、歌手の柏原芳恵さんあたりが同級生になるというから驚きだ。当時と今とでは、同年代でも10歳どころか、20~30歳くらい違いがあるかもしれない。
今の国民皆保険制度を設計した1960年には男性65歳、女性70歳だった平均寿命は、2017年には男性が81.09歳、女性は87.26歳、57年間で実に男性で約16歳、女性で約17歳延びたことになり、社会保険制度の屋台骨がぐらついてきている要因と言われている。しかし、設計当時の構想を現代に当てはめると、さしずめ75歳で定年退職、85歳で他界といったシミュレーションが近いのではないだろうか?ちなみに18年、マレーシアではマハティール氏が93歳で大統領に返り咲いている。
このような時代においてますます重要になってくるのは、まさに「健康」。ちなみにマハティール氏の場合は、93歳でもなお、一国の大統領を務められるだけの体力と気力を兼ね備えているということになる。近い将来、100歳の国家指導者が出てきてもおかしくはない。
人生100年時代の基本中の基本は「健康」
「健康長寿」。WHO(世界保健機関)が2000年に提唱したこの概念で、単に寿命を表すだけでなく、日常的・継続的な医療や介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間。この健康寿命と寿命の差がなくなればなくなるほど、医療費や介護費の削減に結び付くため、世界各国の政府や保健医療政策を管轄する行政機関の多くが、健康寿命延伸を重要な政策目標にしている。
日本で、「健康寿命延伸」が浸透し出した大きな転機は、12年12月に誕生した第2次安倍政権が提唱したアベノミクス第3の矢、「民間投資を喚起する成長戦略」の1つに健康寿命延伸が折り込まれたことだ。同時に発表された「新たな成長戦略~「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」~戦略市場創造プラン(成長戦略2013)」にも同じく健康寿命延伸が明記された。
現在、推進されている健康・医療・介護分野でのさまざまな政策の多くがここを出発点にしており、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の創設や再生医療法の改正、OTC医薬品のネット販売解禁、そして機能性表示食品制度誕生など、記憶に新しい改革も多い。
さらに、その後、安倍政権は15年9月に、「1億総活躍社会」を目指す新たな経済政策「アベノミクス2.0」を発表。その第3の矢「安心につながる社会保障」に、人生100年時代への「高齢者のための多様な就労機会の確保、経済的自立への支援」とともに「健康寿命延伸」が引き続き提唱されている。同年7月には、自治体、経済団体、保険者、医療関係団体等が連携した「日本健康会議」がスタート。そして、17年9月に政府によって「人生100年時代構想会議」が設定され、冒頭の流れにつながってくるというわけだ。
(つづく)
【取材・文・構成:継田 治生】関連記事
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