2024年11月25日( 月 )

全国から九州に産業廃棄物が集まっている~業界用語「飛ばし」とは

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 「全国から福岡県に産業廃棄物が集まっている!?」(コチラ→https://www.data-max.co.jp/article/28068)というタイトルの記事が大きな反響を呼んだ。この記事を読んだという業界関係者から、さらなる情報提供があったので紹介する。

 読者から告げられたのは、一部の関係者で使われる「飛ばし」という言葉だ。正確にいうと、「マニフェスト飛ばし」というらしい。

 マニフェストは排出事業者が収集運搬業者や中間処理業者などに対して発行する法的に義務付けられた管理伝票で、持ち込まれる産廃の形状や荷姿、量、排出事業者、日付などが記載される。マニフェストは交付日から5年間保管することが義務付けられている。

 前項でも述べたが、現在、九州で県外廃棄物を受け入れているのは福岡のみ。他県においては、自治体との事前協議を経て、はじめて受け入れを可能にしているのが現状で、その多くが福岡から搬入されている。そのような場合、原則として、福岡県内で発生した産廃が受入対象となっており、九州外に由来するゴミに関しては受け入れできない。

 大半の産廃業者は適正に処理しているが、一部の資本を持たない業者によっては、関東、中部、関西圏の産廃が福岡の中間処理施設を経由して、宮崎や鹿児島の最終処分場に埋め立てられている。福岡の中間処理施設は県外自治体と事前協議したうえで、持ち込んでいるので、問題ないと思われがちだ。しかしこの場合、産廃の出どころが福岡ではないため、本来は受け入れができないはずだが、廃棄物には名前がないことから、「福岡産」としてまかり通っているのだ。産廃の広域処理は普及しているものの、このようなルールを逸脱した一部の業者のやり方が問題となっている。

 さて、「飛ばし」とはどのような行為か。関西から、福岡の中間処理場にもち込まれ、宮崎に搬入されるというコースを例に挙げてみよう。

 飛ばしとは、中間を省略するやり方で、福岡で中間処理したように見せかけて、関西から宮崎まで直送するというもの。中間処理を省くことで、安くあがるうえに、いったん福岡で下ろす手間がかからず、物理的距離もショートカットでき、輸送費も削減できる。

 関西から関門海峡を渡り、福岡に向かうか、宮崎に向かうのか。当然宮崎に直送した方が早いに決まっている。マニフェストを偽造して、あたかも中間処理したように見せかければ、自治体の監査をクリアできる。中間処理業者がマニフェスト作成に協力すれば、大きな仕掛けは必要ない。これでマニフェスト飛ばしが完成する。

 最終処分場の受け入れ基準もまちまちだ。積み荷が汚いので、拒否する、送り返すという適正な処分場もあれば、受け入れなければ売上にならないと目を瞑る最終処分場もある。選別や破砕などの中間処理がそれほど必要のないゴミに関しては直送。処理が必要な場合は、中間処理施設を経由して、最終処分場にもち込まれているという。

 自治体の立ち入り調査では、マニフェストのチェックが行われているが、中間処理施設から最終処分場に係る2次マニフェストのみを確認しては産廃の出どころは分からない。そのため、チェックの厳しい自治体では1次マニフェスト(排出事業者から中間処理場)の確認を行うようになっている。それでも、飛ばし行為に関して、書面主義では不正は見抜けない。そうやって、関東以西の産廃がルールを無視して九州内にもち込まれている。そうまでして九州に産廃をもち込む理由は処理費用の安さだ。輸送費を上乗せしても、地元よりも安くなる。そう考えると、選択肢は決まってくる。

 取材を進めると、それでも最終処分場が県外廃棄物を受け入れなければならないという現実がみえてきた。

【東城 洋平】

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