米国のファーウェイ潰しの真の狙いは?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
2018年基準に全世界にすでに1万台以上の5Gの基地局設備をファーウェイは供給済みである。しかし、新しい通信設備の導入には莫大な投資が必要とされるため、通信事業者にとっての最大の悩みは、設備投資にともなう資金の確保である。
このような通信事業者の悩みを解決する方法として、通信設備メーカーは、自社製品を購入してもらう見返りとしてファイナンス面で協力することがある。いわゆるベンダーファイナンスである。ところが、ベンダーファイナンスの問題点は、通信事業者の経営が悪化した場合、通信設備メーカーは資金の回収が難しくなる恐れがあるため、近年既存の通信設備メーカーはベンダーファイナンスを縮小する傾向であった。その状況をうまく利用して市場で躍進するようになったのがファーウェイだった。
すなわちファーウェイは中国銀行の資金的なバックアップがあったからこそ成功できたのだ。ファーウェイは、韓国のサムスン電子のような中国企業だ。中国で一番有名な大学である清華大学の卒業生はほとんどファーウェイに入社している。その理由としては、中国のどの企業よりもグローバル競争力があることがあげられている。
それでは、なぜ米国政府はファーウェイを潰しにかかっているのだろうか。米中で覇権を争っているハイテク分野はいくつかある。そのなかでも通信はビジネス上のみならず安全保障上の面から、中国が一番覇権を握りたい分野である。とくに次世代通信規格である「5G」の主導権を握ることができるかどうかは、米国にとって非常に重要である。だから、米国企業の脅威になるファーウェイは潰しておきたい企業なのだろう。
中国のアリババ、バイドゥ、テンセントなどはすでに世界的なIT企業になっている。ところが、ファーウェイは通信設備、スマホを中心に、そのほかクラウド、ビッグデータ分野にも力を入れている。米国の狙いはこのような中国企業に先を越されないうちに潰しておきたいということだろう。
ITは今後ますます国家の戦略と深く関わってくる。個人の生活だけでなく、国家の将来を左右することになると思われている。IoTですべてがインターネットにつながることになると、つながっていることこそが一番大事になる。このつながることの中心に5Gがある。
5Gは4Gに比べ通信速度は20倍速く、ほぼリアルタイムの通信が実現される。エリクソンのリポートによると、2024年には世界人口の40%は5Gを活用するという。
5Gは自動運転、物のインターネット(IoT)など、第4次産業革命のコアインフラになる。すなわち通信技術は国家未来戦略の要であるわけだ。そこで、中国も通信企業であるファーウェイを中心にIT覇権を握ることを狙っている。米国は中国のその狙いに気づいて、それを阻止するために米中貿易戦争を仕掛けているのだ。
ファーウェイは通信設備で情報を漏洩させ、中国政府に提供しているのではないかという疑いもある。この疑惑について、いまだに明確な証拠は提示されていない。
バックドアというのは、利用者の個人情報が勝手にサーバーに流出されることを指す。ファーウェイは2014年、スペインの認証機関である「ENAC」からバックドアがないと認証を受けている。2018年4月にはEUの安全規格の公認認定機関である「TUV SUD」の検証項目もすべてクリアしている。
米中貿易戦争はもっと激化するのか、それとも沈静するのかは、ファーウェイの動向をみればある程度予測できるのではないだろうか。
(了)
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