2024年11月14日( 木 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(15)

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FC加盟店への思い

大村 浩次 氏

 APAMANグループのフランチャイズ(FC)加盟店は、2012年9月に1,000店舗を突破し、賃貸住宅仲介業店舗数の日本一を達成した。全国に広がるアパマンショップのFC加盟店のネットワーク。FC加盟店の経営者とは、ビジネスライクな関係ではなく家族のようにつき合いが深いと大村社長はいう。

 FC加盟店の経営者は、古くは創業前から開催していた不動産業でITを活用する研究会の参加者から始まり、長いつき合いでは20~30年という。つき合いのある加盟店を大切にする方針のため、どの店舗も長くFC加盟しており、いちど加盟した店舗がFCから退会することはほとんどないという。そして、FC加盟店の経営では、短期的に売上を上げることより、長期的な視点で売上を伸ばすことを方針にしている。APAMANグループが企業としていい業績を上げることはもちろん大切だが、商売上の利益や損得だけでなく、義理や人情を大切にしてFC加盟店と長くつき合う姿勢を大切にしているという。

 日本では古くから、商売で義理を立てることや人情を大切にしてきた。しかし、最近では短い期間でビジネスの成果を出すことが求められるようになるとともに、ビジネスの人間関係もドライになり、義理を立てることも人情を重んじることも忘れ去られようとしているように感じる。しかし、お世話になった人に義理を立てることは大切な姿勢だ。また、商売では損得だけでなく、人と助け合い、人を思いやる人情を重んじることも必要だ。そして、ビジネスは人と人のつながりから生まれるものである以上、お互いにとって良い人間関係を築くことがビジネスでもいい流れをつくる。今こそ、人との関係の築き方を見なおすときにきているのではないだろうか。

FC加盟店のサポートを充実

 APAMANグループは、FC加盟店を手厚くサポートする体制をつくりあげている。FC加盟店をサポートするApaman Network(株)が300名体制であることからも、その姿勢がうかがえる。FC店舗の運営をサポートするしくみのなかでの強みは、全国のアパマンショップのネットワークで情報を共有して、不動産賃貸業務を効率化するIT技術。たとえば、アパマンショップトータルシステム(ATS)は、賃貸物件検索サイトへの賃貸物件の掲載から来店したお客さまへの紹介、物件管理業務、不動産オーナーへの情報提供までを一元化して管理できるようにすることで、店舗で行う仕事の効率を上げている。またATSは、広告の集客効果や物件の契約状況、入居率、地域ごとの市場統計などの情報を見ることができる仕組みをつくり、FC店舗の経営の収益向上をサポートしている。そして、システムなどのハード面のみでなく、スタッフがスキルを伸ばせるように定期的に研修を行っている。研修では、お客さま対応や店舗のオペレーションのノウハウを伝えるとともに、賃貸不動産業界の最新情報や他店の成功事例を全国のFC店舗で共有している。さらに、地域別のFC店舗の会議や経営者向けのFCオーナー会議を定期的に開いて、APAMANグループの戦略を伝えてFC店舗同士が経営についての情報を交換してアイデアを共有できる仕組みをつくっている。

自分とは違う視点をもつ人と話すことが楽しい

 大村社長は、人とのつながりを長い目でみて大事にしたいと感じている。普段から、さまざまな業界の人とのつき合いを大切にしていて、ほかの業界や職種の人とのつき合いのなかから学ぶことも多いという。同じものを見たときでも、どこに興味をもって何を感じるかは、どのような業界でどのような職種の仕事をしているかによって違う。また、何かの課題を解決するときにどのように行動するかは、ふだん仕事をしている業界の視点から生まれがちだ。そのため、ほかの業界や職種の人の視点を学び、その視点で事業を見つめなおすことで新しい発見があり、改善案や次の事業をつくるアイデアが生まれる。

 また、外国人経営者や女性経営者など自分とは違う視点をもっている人や違う環境で育った人と話すことは新たな発見があり、世界が広がるという。外国人の経営者は、日本人とは違う文化のバックグラウンドをもっている。たとえば、海外の経営者と話していると、仕事に対する思いや働き方、イノベーションに取り組む方法、社会の環境などがまったく違っていて、同じことがほとんどないところが楽しいという。また、女性経営者は男性とは違う感覚をもっているため、話をするなかで新鮮に感じる視点が多いという。

 APAMANグループは、不動産業界でITがまた使われていない時代からインターネットのネットワークを生かして賃貸不動産のサービスを広げたリーディング企業。自分とは違うアイデアや感性があることを大切にして、さまざまなバックグラウンドをもつ人と話すことで世界を広げて、新しい視点を生み出す大村社長の姿勢が、時代をこえてイノベーションをつくり出すAPAMANグループの原動力になっているのではないかと感じる。

(つづく)
【取材・文・構成/石井 ゆかり】

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