2024年11月22日( 金 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(19)

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自転車をシェアする「ecobike」

大村 浩次 氏

 マンションやアパートの賃貸物件を管理してみえてきたことが、買ったけれども使われずに置かれているたくさんの自転車のことだった。自転車は車や電車などに比べて、電気などのエネルギーを使わずに走るため、CO2削減に役立ち、環境をまもる乗りものだ。一方で、放置自転車が社会問題になって久しい。また、モノをもつことより使うことに気持ちが移っている時代から、モノを共有するシェアリングエコノミーが広がる。大村社長は、いつでも使いたいときにすぐに乗れる自転車があれば、自転車をもたずに毎日便利に使うことができると考えて、自転車をシェアするecobike(エコバイク)事業を始めた。

 車や電車、バス、タクシーなどの毎日の生活でかかせない交通手段。交通業界では目的地までに使う交通手段をワンストップにデザインし、交通手段を共有するライドシェアの実現に向けて取り組んでいる。そのため、電車やバスなどを降りた後の目的地までの「ラストワンマイル」を移動するための交通手段として、シェアサイクル事業を成長させたいと考えている。APAMANグループは、OpenStreet(株)とシェアサイクル事業で提携してHELLO CYCLING(ハローサイクリング)のシェアサイクルのシステムを使い、ecobike事業を展開している。

自転車をいつでも借りやすく

 ecobikeは、提携企業を含めて約20都道府県で約5,000台の自転車を借りることができる。自転車はすべてインターネットのネットワークを使って、オンタイムに管理しているため、乗りたいステーションをHELLO CYCLINGの地図で調べてスマートフォンやパソコンから予約するだけで使うことができる。また、交通系ICカードを登録すると、自転車の操作パネルにICカードをタッチするだけで、予約なしに自転車を使うことができる。自転車を借りられるステーションは、提携先の駐車場や店舗などに設置している。利用料金はスマートフォンやパソコンからオンライン決済ができて、お財布なしで手軽に使えるしくみだ。乗り終わった自転車は、どのHELLO CYCLINGのステーションでも返すことができる。

 電車から降りた後に歩くには少し距離があるところでも、ecobikeは走る力をサポートしてくれる電気自転車のため、ふつうの自転車に乗るよりも楽に移動ができる。坂道も登りやすく、天気のいい日には風を切って走るのが気持ちいい。ecobikeの自転車は、実際に乗ってみると頑丈で安定感がある印象だ。シェアサイクルとして使うため、多くの人がたくさん乗っても問題がないように、投げてもこわれないほどの耐久性があるという。自転車をシェアしやすい仕組みをつくるだけでなく、自転車そのものもシェアしやすいように工夫を重ねている。APAMANグループは、いつでもどこでも利用できるシェアサイクルを目指して、全国で1万台の自転車を置くことを目指している。また、今は提携先の駐車場などが自転車のステーションになっているが、将来はアパートやマンションにもecobikeを置いて、通勤するときや家から出かけるときにいつでも便利に使えるようにしたいと考えている。また、自転車そのものや自転車をシェアするシステムの工夫を重ねることで、利用料金をさらに使いやすくしたいという。移動するときにはいつでもシェアサイクルが使える時代は、すぐそこにきているかもしれない。

社会に役立つ移動手段として活躍

自転車はほかの交通機関とは違い、人のちからで移動することができる。そのため災害が起こって交通のインフラが動かなくなってしまったときにも、電車やバスなどの代わりに移動できる乗りものとして活躍している。APAMANグループは、昨年の夏に広島の豪雨災害があったときに被災地に自転車を寄付し、電車やバスなどの交通が途絶えてしまった安芸地区などで人々が災害からの復旧するためにサポートした。

 シェアサイクルのecobikeは、行政と提携することで全国の町おこしにも役立っている。鹿児島県徳之島の伊仙町もその1つだ。伊仙町は、自然が豊かで景色を楽しみながらサイクリングできる絶好の場所だ。観光で徳之島にきた人にecobikeに乗ってもらえるようにすることで、車をもっていない旅行者も気軽に自転車で島をまわって海や山の景色を楽しめるようになった。また、APAMANグループは、伊仙町に旅行しやすいように(株)グランドゥースを通して民泊の運営をサポートして、島で仕事をしたい人がほかの地域から移り住みやすいコワーキングスペースをつくることを目指している。伊仙町がもつ観光やビジネスの環境を整えて、町を元気にしたいと考えているためだ。

 全国では人口が減りつつあるため、暮らしに必要なバスなどの交通機関が十分でないところが増える可能性もある。自宅から近いところに行くときはもちろん、電車などの交通機関をおりた後に目的地まで移動する手段として、シェアサイクルは今後さらに広まるのではないだろうか。

(つづく)
【取材・文・構成:石井 ゆかり】

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