2024年12月22日( 日 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(22)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

新しいサービスはAIでつくる時代

 いまAPAMANグループの本社の入り口にあるメッセージは、「Towards AI(AIに向かって)」だ。創業したときからITテクノロジーを強みにしてきた同社は、AI(人工知能)を使いこなして新しいサービスをつくることに取りくんでいる。

 日々刻々と移りかわる世の中のニーズ。APAMANグループの新しいニーズをとらえたサービスは、今ではお客様から集めたデジタルデータから、その多くが生まれているという。全国のアパマンショップやウェブサイトのデータを見ると、お客さまが求めていることやサービスに対する印象などがわかる。「データは嘘をつかない」という言葉がある通り、見る人の感覚に左右されないため、はっきりと今の状況がわかるからだ。

お客さまがほしい情報をAIで伝える

大村 浩次 氏

 個人情報や購買履歴などのデジタルデータは、いまでは金銭と同じ資産価値があるといわれるようになった。大村社長は、20年前に創業したときからデジタルデータを使いこなしてサービスをつくることを考え、ITテクノロジーを使うビジネスではデジタルデータをもたなければ太刀打ちできないことを見とおしていたという。全国の不動産会社を集めて研究会を開いていた当時から、不動産のデータを集めていかに使いこなすか、データからお客さまのニーズにあうサービスをいかに生み出すか、データを生かして何ができるかを考え、今も日々の改良を続けている。また、APAMANグループのIT部門は、本社の300人もの社員が毎日何らかの改良をして、今までに何千、何万とシステムをつくりなおしてきた。創業当時は大村社長が考えてシステムを改良していたが、いまは優秀なスタッフを採用しているため、システムを何か改良するときには社員が考えて提案することがほとんどだという。

 APAMANグループは、お客さまのもつ要素や条件から、お客さまがほしい情報や役に立つ情報を、AIを使って届けるデータ・マイニングに注目している。プラットフォーム事業の賃貸あっせんやプロパティ・マネージメントなどの住まいの情報、シェアリングエコノミー事業の情報など、すべての事業の情報をデジタルデータにして保管している。そして、この大規模なデジタルデータを集めて、プラットフォームとよばれるAIなどのシステムを動かす土台をつくる。大規模なデジタルデータの土台を基にAIなどのシステムを動かすことで、お客さまと情報をマッチングしている。たとえば、部屋を探している人にはニーズにあう賃貸物件や住まいのサービス情報、不動産オーナーには税務情報などの不動産の資産を活用するために役立つ情報を届けている。

デジタルデータが企業のIT競争力を決める

 お客さまがほしい情報を届けるためには、お客さまについて多くの情報をもっている方がお客さまのニーズを見つけやすい。またAIは、デジタルデータからパターンを認識して、経験から学んで判断するコンピュータシステムだ。そのため、多くのお客さまデータをもっていることでAIの性能を上げることができて、お客さまがほしい情報を選べるAIをつくることができる。いずれの業界でも業界ならではのノウハウがあるため、これまではノウハウや経験をもたなければ他の業界でビジネスを始めることは難しかった。しかし、プラットフォーマーとよばれる大規模なデジタルデータをもつ企業は、これまでに経験のない業界でビジネスを始めても、データがもつ情報力からお客さまのニーズにあうサービスができる時代になったという。

 AIや、業務を自動化できるシステムのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、これから主流になるITテクノロジーは大規模なデジタルデータをもって初めて使いこなせるもの。そのため、企業としてのIT競争力を高めるためには、大規模なデジタルデータを集めたデータベースをもつことが大切と考えている。

RPAで入力作業が4.8時間短縮

 APAMANグループでは、全国の賃貸物件の空室情報をアパマンショップのネットワークシステム「アパマンオペレーションシステム(AOS)」を使って、全国の店舗で共有している。これまで、新しい空室ができたときや入居者が決まったときには、各店舗で人がパソコンに入力していたが、入力作業は1店舗あたり平均で1日8時間もの時間がかかっていたという。手間や時間をかけずに業務の効率を上げるため、システムを使ってデータを自動で入力できるRPAをいち早く、昨年から導入した。いままで1日8時間かかっていた作業は、RPAを使うと1日3.2時間になり、人の手をかけずに入力できるようになった。またRPAは、自動でデータを入力できるシステムのため、入力ミスも減り、より正確に空室情報を共有できるようになったという。

 不動産業界をはじめとするサービス業は、人の手を使う仕事の自動化が進みにくいといわれているが、RPAなどの新しいITテクノロジーをすすんで使いはじめることで、店舗での仕事の効率を上げてお客さまに向き合って対応できる時間を増やし、お客さまが対面で受けられるサービスを充実させたいと考えている。

(つづく)
【取材・文・構成:石井 ゆかり】

(21)
(23)

関連記事