原発と住民の関係も変化 再エネ小売との協力構想も(前)
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東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所(原発)の事故からおよそ8年、ヨーロッパではイギリスで原発推進の中央政府と原発反対の北アイルランド政府が反目、ドイツは原子力発電の比率を2030年には20%台にする目標を設定。アジアでは韓国が30年に再生可能エネルギー(再エネ)比率20%を目標とする「再生可能エネルギー3020履行計画」を立ち上げるなど、再エネ振興が世界的に鮮明になっている。日本では事故処理の見通しも立たないなか、原発は再び稼働。しかし、住民たちも以前のように「安全」を信じてはいない。原発をめぐる現在を取材した。
原発ゼロから再稼働へ2011年3月11日、東北地方太平洋沖を震源とする東日本大震災が発生し、その津波が福島第一原子力発電所(原発)を直撃。日本最大の原発事故に連鎖した。
この事故を受けて日本中の原発では点検が行われ、順次停止。13年に大飯原発が定期検診のために停止した後は1年11カ月にわたって原発稼働ゼロの状態にあった。
当然、電力産業とその関連企業は反発した。福島第一原発事故以前は「原発は安全安心」と謳い、事故後は当時の民主党政権が打ち出した「原発ゼロ」の目標に対して、「(原発稼働がなければ)電力需要に対応できない」「計画停電が起こり得る」と広告で喧伝、抵抗した。ところが、現実には計画停電が起こらなかったため、「需要論」は説得力を失ってしまった。
援軍が表れたのは13年のことだ。1つは政権与党の座に戻った自民党、もう1つは真贋入り乱れる情報が生んだ「風評被害」への反発だ。
第2次安倍政権は、前政権とは異なって原発再稼働に前向きな姿勢をとっていた。自民党内の「反原発」の声は次第に聞こえなくなっていき、原発推進派と、「安全保障のために必要」という容認派の声が大きくなった。政権交代を期に政府の広告費は増加したが、目立つのは「風評被害撲滅」を掲げた広告だ。
これらのなかには「放射線について正しい知識を」と題して医師や研究者などの有識者にインタビューした体裁を取り、一見して読者に広告だと思われないようにつくられていた。
このほかにも国立研究開発法人・日本原子力研究開発機構を支援してきた文部科学省や、汚染土壌の問題を管轄する環境庁ら官公庁による広告は、放射能に対する国民の「理解」を深め、自然界に放射線があることをことさらに強調することで、人工的な放射線被ばくは問題ないかのように描きその影響について過小評価を促す内容になっている。
原発再稼働は、このような広告で「問題ない」と思わせようとするなかで行われてきた。15年8月に川内原発2号機が再稼働になったことを皮切りに、19年3月末現在は玄海、伊方、大飯、高浜の4原発で計9基が稼働している。
廃炉費用は電気代?
事故後、再稼働と同時に廃炉の決定も行われている。現在まで全国で11基の廃炉が決定しているが、これはその費用を電気代に転嫁できる仕組みがつくられたことと無関係ではないだろう。
東京電力に対する救済策として事故処理と賠償金の費用を政府が支援しているのはよく知られているが、それ以外にも電気事業会計規則の改訂というものがある。これは文字通り電気事業者の会計について規定したもので、この規則を修正することで廃止が決定した原発施設の一部を価値があるものと見なすことができるようになったのだ。
13年に行われた改訂で、廃炉と発電を一体の事業と見なして、「原子炉の廃止に必要な固定資産、原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産」を計上することができるようになったのだ。これにより、タービンや発電機などの純粋な発電施設を除いて廃炉に必要な原発施設を資産として計上することができるうえ、その際に新しく導入した機器についても費用として計上できることになる。費用が多くなれば、電気代への上乗せも可能というわけだ。
こうして、国を挙げた原発の再稼働と廃炉が同時進行で行うことができる状況がつくられたのだ。
(つづく)
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