【検証】関空連絡橋衝突事故を振り返る~未曽有の衝突事故は防げたのか(3)
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2度にわたる警告は「無かった」
事故直後の一部報道では、宝運丸の走錨時、海上保安庁が2度にわたって警告を発したと報じている。宝運丸を所有する日之出海運(株)の清水満雄社長は、事故直後のデータ・マックス社の取材に対し、「実際は警告ではなく、『走錨回避をするための協力動作的なやり取り』であった」と述べていた。
清水社長の主張を裏付ける海上保安庁との交信に関するやり取りが、事故調査報告書の3ページから5ページにかけて記載されている。このやり取りを見る限りでは、「警告」と呼べるような強い言い回しの言葉は見当たらない。
運輸安全委員会の担当者は、「事実情報として9月4日時点の交信記録を記載しておりますが、それ以前の交信記録については入手しておりません。つまりそうした情報は得ておりません。また、報告書上においては、海上保安庁のやり取りが『警告』にあたるかどうかの判断は示しておりません」としている。
矢印の位置がずれた、波浪状況を示す図
報告書の19ページには、事故発生当日(9月4日)の午後1時と2時時点における波浪状況が示されている。ここの図を見ると、午後1時時点の大阪湾内の波の高さは最大で5mから6m、午後2時時点では最大6mから7mにまで達し、当時の大阪湾の波の高さが徐々に増していることがわかる。
しかし、この両図をよく見比べてみると、関空島を指し示す矢印が微妙にずれているのがおわかりいただけるだろうか。見方によっては「意図的」とも取れる矢印が指し示す方向は、明らかに関空島以外の海域を指し示している。
単なる人為的ミスなのか、あるいは「意図的」に行われたものなのか―。運輸安全委員会の担当者は、「ご指摘いただいて初めて気が付きました。担当者に確認したところ、矢印の位置がずれている件については、作図上で発生したミスだと思われます。作図上、何らかの原因で矢印がずれてしまったと思われますが、意図的にずらしたものではありません。ご指摘を受け、指摘の内容を部内で説明し、対応方法を検討いたします」としている。
(つづく)
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