シリーズ・消えた「流通企業」皆が真似したアップスケール スーパーマーケット~ニッショー
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いま、スーパーマーケットの店舗視察をするとしたら人気は、東ではヤオコー、西では阪食、九州ではハローデイであろう。
アップスケール型の店舗は見ていて楽しく、食べておいしい。ちょっとお洒落でまた行きたくなる店たちだ。実は、2000年ごろ、全国のスーパーマーケット経営者がこぞって見学に行った店がある。大阪のニッショーである。
ニッショーは、2つの顔をもつ企業であった。1つは医療器具メーカー、そしてもう1つはスーパーマーケット経営である。
医療器具メーカーとしてのニッショーは、その後社名を「ニプロ」に改め経営を続けているが、スーパーマーケットは、残念ながらその名を現在に残さない。
だが、そのマーチャンダイジング戦略は、いまでも高質のアップスケール型スーパーマーケットのお手本となり受け継がれているのである。
医療機器メーカーであるニプロの経営者と縁戚であった堀内彦仁氏は同社の多角化経営の一環として大阪にスーパーマーケットを立ち上げた。
堀内氏は当時主流であった価格戦争では競合と勝ち目はないと気づき、品質志向のスーパーマーケットに経営方針を打ち出す。
オール日本スーパーマーケット協会(AJS)に加盟し、関西スーパーマーケットなどに生鮮の鮮度管理技術を習得。その後、ニッショーならではの独自のマーチャンダイジング戦略を展開する。それは、ラインストラクチャーMD。
たとえば、いまでは当たり前のパスタ売場だ。それまでスパゲッティは乾物、ソースは缶詰売場、タバスコは瓶売場とバラバラに陳列されていた。それを、パスタコーナーとして本格的な関連陳列を行ったのがニッショーである。
ほかにも、個食パックの商品開発や、お昼と午後のおかずに品ぞろえを変化させる時間帯MDもニッショーの得意技であった。
堀内氏にはこのMDテクノロジーを推進させる心強い右腕がいた。井上靖之氏である。彼は、ニッショーのMDテクノロジーをマーケティング論理と交えながら的確に売場に実践していった理論派であった。
絶頂期の代表店舗では売場面積2,000m2にも関わらず売上高31億円という実績を上げるまでになっていた。
だが、そこに突然の不幸が起こる。リーダー格の井上氏が急逝するのである。その後、ニッショーのMDは羽根を失った鳥のように、進むべき道を見失う。親会社ニプロは、本業に専念する経営政策を固め、スーパーマーケット事業を切り離し、阪食に売り渡す。
いま、阪食のお店は高品質型スーパーマーケットとしてアップスケールし続けるが、その底流にはニッショーのMDテクノロジーがDNAとして脈々と生きているのである。
(つづく)
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