2024年11月30日( 土 )

シェールガス革命による化学業界のパラダイムシフト(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 シェールガス革命が進行中であるが、そもそもシェールガスとは何だろうか。シェールガスとは、堆積岩の一種である頁岩(けつがん)から採掘されるガスのことを指す。頁岩中のごく微細な隙間に閉じ込められている天然ガス成分は、シェールガスと呼ばれ、この天然ガスのなかには暖房または発電用として使われるメタンガスとエタンガスが混じっている。

 エタンガスからは、石油化学製品の原料であるエチレンがつくられる。また、エチレンの結合体であるポリエチレンはプラスチックやビニールなどをつくる合成樹脂の原料となる。もちろん、今までエチレンは原油の蒸留から得られるナフサから生産されていたが、ナフサの代わりにシェールガスを原料にすると、ナフサに比べ、生産コストは数分の一になる。

 シェールガスの採掘は、地下2,000~3,000mにある頁岩(けつがん)を水圧で破壊して行われる。シェールガスの埋蔵は、ずっと以前から知られていたが、採掘する技術がなかったり、コストがネックとなったりで、採掘されてこなかった。ところが、2000年前後に、米国で採掘技術が確立されると同時に、採掘コストも下がり、シェールガス開発の拡大が大幅に進むことになった。

 今後もシェールガスの生産量は拡大を続けることが予想され、2040年には2012年の生産量の約2倍になると見込まれている。シェールガスの生産拡大によって、天然ガス価格は2008年は8.86ドル/mmBTUだったが、2012年には2.75ドル/mmBTUまで下がっているし、2020年ごろには4~5ドル/mmBTU程度になることが予測されている。このようにシェールガスの成分であるエタンガスから生産されるエチレンは、包装材や容器、家電製品などの生産に広く使われる、汎用樹脂の原料である。

 エチレンの原料が安くなることは、化学業界にとってはコスト削減につながり、喜ばしいことである。エチレンは気体での輸送が簡単ではなく、専用の船舶が必要とされているため、まずは米国で生産を開始することになったのだろう。米ダウ・デュポン社は2017年9月にテキサス州でエチレンとポリエチレンの工場を稼働しているが、多くの企業がこれに倣っている。その結果、米国ではエチレン価格が急落している。

 スポット価格は米国で1t=280ドル台、年初の価格と比較しても、約5割以上下落している。アジアのスポット価格が1,120ドル程度なので、米国市場の価格がいかに安いかがわかる。このような格安のエチレンは今後、アジア市場に向かうことになるだろう。米国発の化学革命は化学業界に大きなパラダイムシフトをもたらすことは間違いない。

 シェールガス革命は原油価格を抑える役割をはたす一方、生活に広く浸透している生活用品の価格を安くし、生活にも寄与することになるだろう。米国発のシェールガスがもたらす革命が今後どのように進展するのか目が離せない。

(了)

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