朗報!貸会議室のTKPがJ1大分トリニータの筆頭株主に~九州男児、河野社長の起業家人生(後)
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貸会議室の需要に目をつける
05年に再び、転機が訪れた。学生時代の友だちの事故死に、人生一度切りだと改めて思い知らされ、自分がやりたいことを見つめ直した。そこで、自分がやりたかった起業を決意。05年にティーケーピー(TKP)を設立した。
『週刊ダイヤモンド』(10年8月21日号)で、貸会議室で起業した経緯を語っている。
〈そのころ、ある知り合いから情報が舞込んだ。取り壊しの決まっている3階建てのビルで、1階のレストランが出ていかなくて困っているという。ピンとくるものがあり、出かけると、「相場の3分の1でいいから借りてくれないか」と持ちかけられた。
「3カ月前に通告されたら必ず出ていく」という念書を入れて1坪5,000円、月額20万円で2つのフロアを借りた。近くの会社に営業に行くと、建設現場に近いゼネコンがワンフロアを月25万円で借りるという。すぐに利益が出た。もう1つのフロアはネットで空室情報を流したところ、社内情報に使いたいなどの問い合わせが数多く舞い込んだ〉
需要の多さに気づいた河野氏は、取り壊し間近なビルや遊休不動産を探し当てては、格安の家賃で借りて、貸会議室を拡大していった。
貸会議室運営は、すき間(ニッチ)を狙ったビジネスだ。物件は保有せず、借りた部屋を会議室に改装して転貸するというビジネスモデルだ。もともと競争相手のいない分野だったので、短期間で最大手にのし上がった。TKPは17年3月、東証マザーズに上場した。
大塚家具の救済で名を高める
TKPは17年11月、大塚家具がもつ自己株式129万株を1株815円(総額10億5,135万円)で買い取り、発行済み株式の6.81%を保有する第3位の大株主となった。
創業者の大塚勝久氏と娘の大塚久美子氏が骨肉の争いを繰り広げた大塚家具。娘が勝利したものの、経営危機に見舞われた。資本提携は河野氏がもちかけた。
大塚家具は大型店の業績が大幅に落ち込んだ。TKPは、大型店の空いているスペースを借りて、イベントホールや貸会議室に活用。大塚家具は、TKPに又貸しすることで、大型店の賃料の負担を軽減する。
崖っ淵に立たされていた久美子氏に救済の手を差し伸ばしたことで、河野氏は、一躍、“時の人”となった。だが、大塚家具株の下落で、TKPは8億円の特別損失を計上。大塚家具は、自力再建を断念し、中国資本に身売りした。
シェアオフィス大手の日本法人の買収で、成長に弾み
TKPは5月31日、「リージャス」ブランドでシェアオフィスを世界に展開するIWG(スイス)の日本法人「日本リージャスホールディングス」の子会社化の手続きを完了した。買収額は450億円程度だった。
TKPは約250拠点、リージャスは約150拠点、合わせて約400拠点。10年で1500拠点の目標を掲げる。1年をメドに80拠点を展開する。
初の共同施設は、西日本新聞社傘下の西日本新聞ビルディング(福岡市)から運営委託を受けた「天神スカイホール」。西日本新聞会館の16階に所在。貸会議室やレンタルオフィスとして9月から順次展開する。
20年2月期の連結決算は、売上高は前期比19%増の422億円、営業利益は4割増の60億円といずれも過去最高を見込む。
リージャス日本法人の買収効果で、22年2月期の連結営業利益は、20年2月期予想より6割多い100億円程度を計画。100億円超えは初めてだ。
「イケイケドンドン」の勢いに乗って、J1大分トリニータの筆頭株主になった。目標はJ1の首位になること。
90年代後半からのネットバブルの時代に、ベンチャー起業家が多数誕生したが、消えていった起業家が圧倒的に多い。河野貴輝氏は成功した起業家の数少ない1人だ。まさに、今が旬である。
(了)
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