2024年12月19日( 木 )

AIで市場拡大へ 音声認識市場をつくったアドバンスト・メディア~話した声を文字にする音声認識、AI活用で高度・高精度に(4)

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(株)アドバンスト・メディア 代表取締役会長兼社長 鈴木 清幸 氏

誰の声でも認識できる技術をつくる

代表取締役会長兼社長・鈴木清幸氏

 ビジネスで音声認識が使われるためには、誰の声でも事前学習なしに大規模語彙連続音声認識できる「不特定話者音声認識」が必要であった。22年前の創業時からこの不特定話者音声認識ができるのはアドバンスト・メディアだけであったため独立独歩で日本の音声認識の市場開拓ができたともいえる。

 13年辺りからDNNが利用可能になり実用的な不特定話者音声認識がアドバンスト・メディア以外でもできるようになった。そして、今ではiPhoneのSiriやGoogleアシスタントなどでも手軽に声で文章入力ができるようになってきた。それに対して、アドバンスト・メディアは従来の不特定話者音声認識をDNNによりさらに磨きをかけ、SiriやGoogleをしのぐ不特定話者音声認識としてさまざまな市場領域に提供している。

AIで認識精度を高める

 DNNで音声認識の精度を高めるには、DNNの進化に加えて、言語処理能力の進化も必要である。アドバンスト・メディアでは、ディープラーニングの発展技術であるリカレントニューラルネットワークのLSTM(Long Short-Term Memory)を実装することでDNNを進化させてきた。さらには、SiriやGoogleなどの汎用型音声認識エンジンで付きものの、AI自動学習の問題点を克服した領域特化協調型学習で言語処理能力も進化させている。

音声認識が目指す未来とは

 音声認識の未来は、どこに向かうのだろうか。人の声を文字にして記録することにとどまらず、これからは人とAIが対話をして課題解決をする「音声AI」の世界をつくることをアドバンスト・メディアは目指している。人が話しかけたことにAIがそのまま答えるだけではなく、声を使って人とAIが「対話」できることが必要だと鈴木氏は話す。コールセンターのバーチャルオペレーターや、スマートフォンからのチャットの問い合わせなど、「音声AI」が顧客対応できる仕組みをつくっている。

 (株)U-NEXTマーケティングでは、「音声AI」がコールセンターの問い合わせに対応するサービス「AIコンシェルジュ」を始めている。1例として、生協のコープこうべのコールセンターの電話注文があげられる。今までの電話注文では、電話のボタンを押して商品を注文する方法のために手間がかかり、注文を途中でやめてしまうケースが多いことが、コープこうべで課題になっていた。

 しかし、声で「注文」や「変更」「キャンセル」「確認」などの手続きができるようにしてから、この2カ月で離脱率が3割以上改善、受注率も3割増加という結果が出ている。また、24時間365日運用できるため、将来は航空券の予約の変更やインターネット接続トラブルなど営業時間外の緊急の問い合わせにも、「音声AI」を役立てることを目指している。

AIを使って人の能力を高める

 これからは、大手通販会社のコールセンターのスーパーバイザーの例のように、AIをうまく使って人の能力を高められるようにしていきたいと鈴木氏は話す。最近では、働き方改革などで大手企業を中心に、企業がAIを活発に使い始めるようになってきた。生産性やサービスの品質を高めることが必要になるため、自分が成長して能力を高めるか、AIの助けを借りて人が「スーパーマン」になるしかない時代になるだろうと鈴木氏は予想している。

次の時代に進歩する技術とは

 人が機械を操作する技術のなかで、これから進歩すると鈴木氏が注目しているのは「マルチモダリティ」だ。たとえば、話している人の表情を声と同時に認識できるようにして、人の声を補うかたちで組み合わせると、人の声や感情を認識する精度もさらに高まる。また、顔と声の認識の両方を使うことで、セキュリティーを向上させることもできる。これからは、音声認識とほかの認識技術を組み合わせて役立てることが、次の時代のステップになる。

 子どものころは、SFの世界のものだった音声認識技術。だが、SFの世界として描かれていた多くの技術が、未来の社会で広く実現してきた。AIなど技術が進歩して身近になった音声認識で、想像していたSFの世界を実際に「声で聞く」時代がこれから実現するのではないだろうか。

(了)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:鈴木 清幸
所在地:東京都豊島区東池袋3-1-1
設 立:1997年12月
資本金:68億6,841万円
売上高:(19/3連結)42億5,619万円

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