【NEXT（次世代）カンパニー】AI点検ロボットで　インフラ点検業界に挑む（後）

オングリット（株）

テレワークでマイクロソフトと共同プロジェクトも

　CAD図面作成などのテレワークもすでに運用を開始している。今のところ、個人と契約を結ぶのではなく、シングルマザーなどの支援施設と契約を結び、オングリットで2週間ほどの研修を受けた施設職員が個人に指導する体制をとっている。テレワークの利点は在宅で可能な仕事のため、子育てや食事の支度などの合間に作業できる点にある。

　オングリットでは、テレワーク作業の時給を「1,500円以上」に設定しており、最低賃金が低い過疎地域のアルバイトに比べれば、かなり高額なのも魅力だ。現在2つの施設と契約を結んでいるが、10以上の施設が契約を希望している。「今の弊社の社員数ではムリですが、いずれはシングルマザーの方々と直接契約、指導していきたいです」（歩取締役）と話す。

　シングルマザーの待遇改善について、オングリットはマイクロソフトと共同プロジェクトに取りかかっている。春菜代表取締役によれば、「都会のシングルマザーの待遇は改善されつつあるが、地方ではまだまだ以前の状態のまま」という現状がある。「地方のシングルマザーを支援したい」という春菜代表取締役の思いと、シングルマザーの支援を通じて「地方創生」などの社会貢献を実現したいマイクロソフトの思惑が一致したカタチだ。

　具体的には、大学院修了などの高い学歴をもつシングルマザーの支援だ。高学歴なシングルマザーが田舎の飲食店のアルバイトに応募する際、学歴が高過ぎると、使いづらいからと不採用になってしまうため、多くの場合最終学歴を隠すという。「こんな処遇はナンセンスだ」とし、両社共同のもと、そのような女性を対象にオングリットのテレワークサービスの教師（指導者）にとして育成するプロジェクトが進められている。

社名の「GRIT」は「やり抜く力」

　同社は、20歳〜30歳の若い社員が多い。ほかの橋梁点検会社の社員が軒並み高齢化しているのと対照的だ。「弊社は現場仕事もある建設関連会社で休みも少ないです。それでも若い人が入ってくれるのは、『新しいことに挑んで、社会に貢献する』ことにやりがいを見出しているのかもしれません」（歩取締役）と目を細める。

　社名「オングリット（ON GRIT）」の「GRIT」には、「やり抜く力」という意味がある。「大きな物事を成し遂げるには、才能よりもGRITが必要だ」という自らのビジネスへ思いが込められている。土木の世界にAIとテレワークで飛び込んできた同社が、何をやり抜こうとしているのか。今後も目が離せない。

（了）
【大石　恭正】