2024年11月16日( 土 )

これから本格化する地銀の経営統合を検証する(3)

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 【表1】を見ていただきたい。第二地銀(40行)の貸出金残高順位表である。19年4月1日、近畿大阪銀行(第一地銀)と関西アーバン(第二地銀)が合併して関西みらい銀行と行名を変更。関西みらい銀行は第一地銀協に加盟しており、現在第二地銀は39行となっている。

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~この表から見えるもの~

 第二地銀40行の19年3月期の貸出金は、前期比+1兆3,786億円の52兆263億円(前期比2.7%増)。預金は前期比+8,224億円の65兆2,240億円(1.3%増)。

・一方、第一地銀の貸出金は209兆8,490億円で第二地銀の4.0倍。預金は268兆6,831億円で4.1倍となっており、関西アーバン銀行の預貸金が関西みらい銀行に含まれる20年3月期にはさらにその倍率が上がることになる。

 預貸率を見ると、18年3月期の平均は78.6%。19年3月期の平均は79.8%(1.2%増)となっており、貸出金の増加額が預金より多いことを裏付けている。

・預貸率が60%台の第二地銀は4行。一番低い銀行は長野銀行(長野県)で60.2%。以下、愛知銀行(愛知県)65.0%。北日本銀行(岩手県)67.7%。福島銀行(福島県)69.4%となっている。東北・甲信越の貸出が厳しい状況にあることがわかる。

・愛知県には第二地銀が3行。貸出金4位の名古屋銀行の預貸率は75.7%。17位の中京銀行は79.3%となっており、貸出金8位の愛知銀行は低利の貸出競争に加わらないようにしているようだ。

 貸出金残高1位は北洋銀行(北海道)で、前期比+2,679億円の6兆5,772億円(前期比4.2%増)となっている。破綻した北海道拓殖銀行および札幌銀行との合併を通じて、第一地銀の北海道銀行の規模を大きく上回っている。

 2位は関西みらいFG傘下の関西アーバン銀行で、前期比+557億円の4兆147億円(1.4%増)。19年3月末まで第二地銀に加盟していたが、19年4月1日付で近畿大阪銀行と合併し、関西みらい銀行に行名変更。関西みらい銀行は第一地銀協に加盟したため、20年3月期にはその名は消えている。

・以下、3位は京葉銀行で、前期比+1,590億円の3兆6,133億円(4.6%増)。4位は関西みらいFG傘下のみなと銀行で、前期比+1,548億円の2兆6,821億円(6.1%増)。5位は名古屋銀行で、前期比+1,382億円の2兆5,964億円(5,6%増)となっている。

 貸出金が前期比マイナスとなっている銀行は4行。東日本銀行は前期比▲1,629億円の1兆5,980億円(▲9.3%)。東京スター銀行は前期比▲703億円の1兆6,636億円(▲4.1%)。以下、富山第一銀行は前期比▲62億円の8,355億円(▲0.7%)。佐賀共栄銀行は前期比▲29億円の1,812億円(▲1.6%)となっている。富山第一銀行と佐賀共栄銀行は貸出金が伸びずに前期比マイナスとなっている。

・一方東日本銀行と東京スター銀行は大幅に減少している。【表2】を見ていただきたい。両行の19年3月期の預貸金比較表である。

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 単位は百万円のため億単位以下切り捨ての【表1】と誤差はあるが、東京スター銀行は科目別の貸出金残高を記載しており、証書貸付の▲708億円が一括返済されたと推測される。東日本銀行も同様と見られる。また預金においても東京スター銀行は前期比▲1,648億6,700万円。東日本銀行は前期比▲932億3,000万円減少しており、大口の預貸金が満期決済されたものと推測される。

 九州の第二地銀の貸出金を見ると、ふくおかFG傘下の熊本銀行は12位で、前期比+2,198億円の1兆5,344億円(前期比16.7%増)と大幅に増加させている。しかし、預金は前期比▲77億円の14,163億円(▲0.5%)と減少したため、預貸率は108.3%でオーバーローンになっている。

・27位は南日本銀行で前期比+11億円の5,673億円(0.2%増)。何とか前期比プラスを維持しているものの、厳しい状況にあるようだ。

・32位は宮崎太陽銀行で、前期比+145億円の4,900億円(3.0%増)で、第二地銀の平均増加率2.7%は上回っている。

・34位は豊和銀行で、前期比+30億円の4,108億円(0.7%増)。一方、預金は前期比▲58億円の5,108億円(▲1.1%)と減少しており、預貸金とも伸び悩んでいるのが読み取れる。

・35位は福岡中央銀行で前期比+20億円の3,764億円(0.5%増)。預金は前期比+50億円で4,620億円(1.1%増)と、伸び悩んでいるのがわかる。

・39位は西日本FH傘下の長崎銀行。前期比+42億円の2,467億円(1.7%増)と増加。しかし預金が前期比▲37億円で2,209億円(▲1.6%)となったため、預貸率は111.7%で、前年同様オーバーローの状態が続いている。

・最下位の40位は佐賀共栄銀行で、前期比▲29億円の1,812億円。預金は前期比+50億円の2,304億円(前期比1.3%増)となっており、厳しい状況が続いている。

<まとめ>

第二地銀の上位行は収益を求めて貸出金を大幅に増加させているが、下位行の貸出金は伸び悩んでいるのがわかる。九州の第二地銀(7行)でも、貸出金を大きく増加させているのは熊本銀行だけとなっており、今後上位行と下位行との二極分化は、さらに進むものと予想される。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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