孫正義氏、アスクル問題で吠える「裏で糸を引いたとか、忖度させた覚えはない」(後)
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少数株主は解任された4人を支持
アスクルは8月5日、関東財務局に臨時報告書を提出し、同月2日に開かれた定時株主総会での取締役再任議案に対する賛成比率を開示した。岩田彰一郞社長兼CEO(最高経営責任者)の取締役再任議案への賛成比率は20.80%。3人の独立社外取締役の賛成比率は、26%台だった。
4人の再任に対しては、アスクル株の45.1%をもつ筆頭株主のヤフー、アスクルの出身母体で11.6%をもつ第2位株主の文具大手プラスが反対。岩田氏は「業績低迷」、3人の独立社外取締役は「岩田氏を任命した責任」を理由に再任に反対した。ヤフーなどは総会前にネットで議決権を行使しており、総会で正式に再任が否決され、4人は解任された。
アスクルは、それとは別に、ヤフーとプラスの議決権行使を除いた賛成比率を公表した。親会社が決定権をもつ上場会社では、親会社を除く少数株主の賛否が重要になる。
前回、臨時報告書の分を掲載したが、対比させるために、少数株主の賛成率を合わせて掲載する。
全体の賛成比率と少数株主の賛成比率は真逆の結果となった。
岩田氏の賛成比率は75.74%。少数株主が圧倒的な支持を与えたのが、解任された3人の独立社外取締役。93~95%と高い支持率を得た。逆に、社外取締役であるプラス社長・今泉公二氏と、親会社ヤフー取締役・小澤隆生氏のそれは68%台にとどまった。
解任された岩田氏と3人の独立社外取締役を、機関投資家や個人株主など少数株主は支持。大株主が送り込んだ社外取締役にはノーをつきつけた。
アスクルは「ヤフー、プラスの行った一連の行為は、少数株主の意思と合致しているものとはいえず、改めて遺憾である」と表明した。
敗者のはずのアスクルは超強気だ。8月2日に、COOから社長に昇格した吉岡晃氏は就任会見で、「岩田前社長からのDNAを引き継ぐ」と発言。引き続きヤフーに資本・業務提携の解消を求めていく方針を鮮明にした。
孫氏が怒りを炸裂させたワケ
今回の騒動で、ミソをつけたのが、SBGの孫正義会長兼社長である。孫氏は10兆円ファンドを操り世界をまたにかけるグローバル投資家だ。8月7日の決算会見で、人工知能の関連企業に投資するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に触れ、「SBCのこれからの姿は、ほとんどSVF一本といっても過言ではない」と発言している。
英米独の企業統治先進国では、支配株主に厳格な少数株主保護義務を負わせており、それに反すると、巨額の損害賠償を負う。しかし、日本の株式市場はいまだ、そういう法律はない。それをいいことに、ヤフーの凶行を許しているとしたら、世界中でSBGの10兆円ファンドからの出資は、大きなリスクと認識されかねない。投資家・孫正義氏の信用に関わる深刻な問題なのだ。
孫氏がヤフーの行動を否定。「裏で引いたとか、忖度させたことはない」と怒りを炸裂させた。ヤフー=アスクル問題がつきつけた刃が急所を突いていたということにほかならない。
(了)
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