廃プラスチック処理は世界的な問題に(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
リサイクルビジネスは補助金なしでは成立が難しいビジネスだが、補助金の金額が少なく、回収してもペイできないので、回収業者は廃プラスチックの回収に積極的ではない。
もう1つの問題として、廃プラスチックのなかで一番多くの割合を占めているペットボトル内に吸い殻などの異物が入っていて、約40%がリサイクルできないことも挙げられる。
回収しても、選別過程で費用が掛かりすぎて、収益を悪化させる要因の1つになっているようだ。ごみは焼却するか、埋め立てるか、リサイクルするしか方法がないが、ダイオキシンの問題などで、焼却施設建設に対する住民の反発が大きく、焼却施設は減少傾向にある。
また、ごみを埋め立てする場所が段々減ってきており、なおかつリサイクルには費用がかかるので、不法投棄する事例が増えていて、深刻な社会問題になりつつある。
リサイクルビジネスは構造的な問題も抱えている。韓国では、ペットボトルに色がついているが、色つきのペットボトルは、リサイクルに向いていないようだ。韓国では、このようなリサイクルに向かないペットボトルが全体の98.2%を占めていて、悩みの種となっている。
韓国のビールのペットボトルは褐色だが、褐色は日射光線を遮断し、ナイロンは外部から酸素が入るのを防ぎ、中から炭酸が抜けるのを防止する役割をはたしているので、色を簡単に取るわけにはいかない。
色だけでなく、ナイロンのような他の材料が交じっていることも、リサイクルを難しくしている要因である。
このようなビール向けのペットボトルは、韓国では年間1万1,200トンある。色の問題だけでなく、日本、米国から輸入されたペットボトルは透明で、クオリティーも高いので、国産のペットボトルは見向きもされなくなっているのも現実である。
上記のように、廃プラスチックのリサイクルは、さまざまな問題を抱えており、不法投棄された廃プラスチックが深刻な環境汚染になっているという報告もあがっている。
持続可能な社会にするためには、政府も消費者も自覚をもって行動する必要がある。リサイクルの好事例として北欧のスウェーデンが挙げられる。EUは38%を、米国は54%のごみを埋めたてしている反面、スウェーデンはごみの1%しか埋め立てしていない。
一般家庭ごみは徹底的に分離回収され、ほかの製品の原料になったり、製品になったりしているし、生ごみなども堆肥などに活用されているという。そのほかのごみは焼却され、電気、暖房などのエネルギーとして活用されているようだ。
このようにスウェーデンは資源循環型国家として、皆が一丸となってごみの発生を抑制し、発生したごみは資源またはエネルギー源として有効活用されている。
廃プラスチックを溶融して油にする技術などが最近開発されているし、大阪ガスでは超低温に冷却させることによって、ごみが破砕されやすくなり、その結果、リサイクル効率がかなり向上したという事例もすでにある。
長い間、私たちの生活を便利にしてくれたプラスチックだが、近年になって廃プラスチック処理問題が大きくクローズアップされている。この問題の解決に真剣に取り組み、環境問題の改善とともに、ビジネスチャンスをつかむ企業の登場を期待している。
(了)
【劉 明鎬 氏】の記事一覧
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