2024年12月01日( 日 )

廃プラスチック処理は世界的な問題に(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 少し前まで中国は世界最大のごみ輸入国家だった。ロイター通信によると、中国は2016年に730万トンの廃プラスチックㆍビニールを輸入していた。金額で37億ドルに上る。

 中国は世界の廃プラスチック・ビニール輸入の56%を占めており、米国を始め、日本、ヨーロッパの国々、韓国などは、中国にごみを輸出して、自国のごみ問題を解決していたわけだ。ところが、2017年7月、中国はWTOに今後24種類のごみの輸入を制限すると宣言した。

 そのきっかけになったのは、中国で上映された「プラスチック・チャイナ」という映画だ。廃プラスチック処理にかかわる人々の生活を描いた映画で、この映画が封切りされるや、中国社会はショックを受けることになった。

 この映画の影響で、中国政府は「中国はこれ以上世界のごみ箱になりたくない」と宣言するに至る。外国からごみを受け入れるのを中止しようという社会運動が中国で拡散され、やがてこの社会運動は中国政府を動かしたのだ。

 過去20年間、中国は世界のごみを受け入れる役割をはたしていたが、それをやめたのだ。米国などは中国にプラスチック、古紙、古鉄などを輸出し、ごみ問題を解決すると同時に、収益も上げていた。

 中国側も廃家電製品、古鉄、廃プラスチックなどを輸入し、資源として活用していたので、両者の利害は一致していた。とくに、中国は毎年700万トンのプラスチックを輸入してリサイクルをし、資源活用をしていた。ところが、中国が廃プラスチックの輸入を制限したことにより、廃プラスチックの行き場がなくなってしまい、中国に輸出されていた廃プラスチックの一部が韓国に輸入されるようになった。

 韓国ではごみを圧縮さえしていれば、届けるだけで通関が可能なので、中国向けの廃プラスチックが韓国に向かうようになったのだ。日本は4,916トンの廃プラスチックを、米国は1,997トンの廃プラスチックを韓国に輸出している。一方、韓国の廃プラスチックの中国への輸出は17年の2万2,097トンから18年には1,774トンになり、92%も減少している。

 今回の中国の措置に各国はどのような対応をしているだろうか。EUはプラスチックの使用に税金をかける方法を考慮している。イギリスではごみの輸出先を中国から東南アジアに変更することを検討している。米国は中国に今回の輸入制限を撤回してくれることを要求しているが、中国はそのような気配は見せていない。

 今回の中国の措置で、最も深刻な影響を受けているのは、韓国ではなかろうか。韓国の1人あたりの廃プラスチックの発生量は、2016年基準で132.7㎏と世界1位の水準である。このように発生量が多い状況だが、廃プラスチックの回収はあまり行われていない。

(つづく)

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(後)

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