世界のパワーバランスの変化に食い込む孫正義の投資戦略(前編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年9月27日付の記事を紹介する。
日本はもちろんアジア、世界全体が大きな地殻変動の渦に飲み込まれようとしている。しかも、政治、経済ともに先が読めない。前言をあっという間に翻す大統領がいるかと思えば、終身皇帝の座を確保するために憲法をいとも簡単に変えてしまうリーダーもいる。そうした不安定な国際情勢を前に、ビジネスの世界では冒険心や挑戦の気概を失い、立ち止まってしまう経営者が大半である。
そんな中、トランプ大統領やプーチン大統領、そしてモディ首相や習近平国家主席の心を鷲掴みにする「サムライ経営者」が孫正義氏だ。サウジアラビアのムハンマド皇太子を魅了し、100兆円近い投資を引き出すことに成功した。彼が率いる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は運用資金の規模では世界最大を誇る。リスクを取ることに躊躇していない。
そこには「世界を変える」という未来へ賭ける情熱が感じられる。「日本を洗濯する」と訴えた坂本龍馬を理想とし、毎朝、坂本龍馬の肖像画に向かい「龍馬に負けない決定を下す」と自問自答する孫正義氏。彼の胸中には「日本から世界を変える」という思いが煮えたぎっているようにも見える。と同時に、彼は世界のパワーバランスの変化に人一倍敏感だ。
例えば、タイを例にとってみよう。アセアン第2の経済規模を誇り、アジア版NATOの主要メンバーとしてアメリカとの強い絆を国内の治安安定の柱に据えてきた。アメリカはアジア最大の6,000人を擁するアメリカ大使館をバンコクに構えている。そんなタイがこのところ急速に中国との政治、経済、軍事関係を強化しはじめた。中国から戦車や装甲車をはじめ、同国初となる最新鋭の潜水艦も購入することになった。
アメリカはタイを繋ぎとめようと無償の武器援助を明らかにしたが、タイに言わせれば「そんな旧式の装備品をもらっても役に立たない」とのこと。それどころか、アメリカの反対を押し切って、中国のファーウェイ製の5G技術を導入することを決定。マレーシアもフィリピンも同様の決定を下した。
言い換えれば、アジアにおけるアメリカの影響力が急速に消滅し始めているのである。過去の延長上でアメリカの同盟国であれば、政治も経済も安定し発展が約束される時代ではなくなった。そのことにタイを筆頭にアジアの国々が目覚めたのである。こうした流れは孫正義氏にとってはまたとないチャンスであろう。
なぜなら、これまでのアメリカ製品による独占体制が崩れ、中国との競争環境が生まれたわけで、世界にネットワークをもつソフトバンクとすれば新たな販路を切り開く絶好の機会が到来したに等しいからだ。孫氏は持ち前のソフトパワーを全開させ、アメリカや中国のコネクションを活かしながら、アジアに猛烈な食い込みを展開している。
※続きは9月27日のメルマガ版「世界のパワーバランスの変化に食い込む孫正義の投資戦略(前編)」で。
著者:浜田和幸
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