世界のパワーバランスの変化に食い込む孫正義の投資戦略(後編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年10月4日付の記事を紹介する。
孫正義氏は人類とAIとの関係について独自の見方を持っている。
曰く「世の中にはホワイトカラーとブルーカラーの2種類が存在する。しかし、今や、第3の新しいカラーが登場してきた。それは“メタルカラー”だ。彼らはブルーカラーの職を奪うだけではなく、多くのホワイトカラーの仕事も代替するだろう。メタルカラーが進化し、自由に動き、働くようになるのは時間の問題だ。そうなると、人間の仕事とは何かを考え直す必要が出てくる。更に言えば、われわれの人生の意味も捉えなおす必要があるだろう」。
誰もがうっすらとは想像しているが、真剣には向き合おうとしていない課題である。そんな「目前に迫る問題」に真摯に取り組もうとしているのが孫正義氏である。彼曰く、「誰もが考えようとしない、避けて通りたいと思うテーマに挑戦したい。誰も立ち上がらないから、自分にチャンスがある」。
そんな彼の未来予測に耳を傾けてみよう。「今から30年経てば、スマートロボットの数は100億台に達する。ちょうどそのころ、人類の数は100億人だろう。100億の人間が100億のスマートロボットと共生する時代になる」。そんな社会が目の前に迫っているというのだ。
そうした現状把握と未来展望に立ち、孫正義氏は「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を運営し、新たな時代に備えようと意気込んでいる。彼の「合言葉」は「シンギュラリティ」である。もともと未来研究者のレイ・カッツウェル氏が提唱し始めたコンセプトで、「2040年までに人工知能が人間を凌駕する」というもの。無人走行車や宇宙ビジネスで新境地を見出そうとするイーロン・マスク氏は「AIの進化は北朝鮮より大きな脅威だ」という。
しかし、孫正義氏は「シンギュラリティの波に乗ることで、新たな時代を切り開く」という発想を温めているようだ。彼は既に2010年の投資家向けセミナーで「AIやロボットは人類の脅威ではなく、人類をより健康で幸せにしてくれるパートナーだ」と述べていた。実際、ビジョン・ファンドの投資先は「スマートロボットが人間を凌駕するシンギュラリティを前提にしたニュービジネス」を先取りしたものに他ならない。
このところ毎年、500億ドルもの資金をこうした新分野に投入している。その原資はサウジアラビアからの投資もあるが、ゴールドマン・サックス、みずほフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、ドイツ銀行など多様化している。
言うまでもなく、今やその投資先は世界中に広がっている。孫氏曰く「もはや国境には意味がない。国境を超えたビジネス展開を追求しなければ、誰かの後塵を拝するだけのこと。情報革命は止まるところがない」。彼がアメリカに限らず、ロシアやインド、そして中国や中東にも頻繁に足を運ぶのは、そのためである。
※続きは10月4日のメルマガ版「世界のパワーバランスの変化に食い込む孫正義の投資戦略(後編)」で。
著者:浜田和幸
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