2024年12月05日( 木 )

信用と実績をつくり上げた100年 九州から全国に発信し、200年企業を目指す

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鳶土工工事、土木工事、解体工事、リニューアル工事ほか
中村工業(株)

解体工事は解体後の活用方法を考えたうえで進めていく
解体工事は解体後の活用方法を考えたうえで進めていく

強みは他社が真似できない機動力

 中村工業(株)は、福岡市中央区舞鶴に本社を置き、鳶土工工事を軸に114年続く建設会社である。現代表の中村隆元氏が5代目となり、創業は1906(明治39)年に遡る。そんな100年企業に勤める社員は約220名。大半が土木や建築の技術者である。あくまでゼネコンの下請という立場は変わらないが、現場を支える屋台骨として、ゼネコンからの信頼は絶大だ。「『中村』に任せておけば大丈夫」――これが最大限の賛辞である。

 事業規模は拡大しつつも、その中身はこの10年で変化してきている。もともと鳶土工から始まった同社だが、現在は土木や解体工事のほか、リニューアル、PC工事など業種の幅が広がっている。自ら積極的に新しい分野に進出していったわけではない。人や機会との出会いにより、自然と導かれた。そして、気付かされたのが、総合力のある専門工事会社だ。いずれゼネコンでも現場に配置される人手は少なくなる。そうなれば、複数の領域で稼働できる会社が重宝されるに違いない。その読みは当たった。現在、鳶土工は事業全体の3割から4割で推移しているが、ゼネコンと専門工事業の橋渡しを行い、自社で職人と機械を投入できるのが中村工業の強みだ。発注者から見れば、それが安心感につながり、災害が起きない、工程を守る、職人を送り続けられる存在として、認められている。

山留工事では「地中連続壁(SMW)工法」を採用
山留工事では「地中連続壁(SMW)工法」を採用

コミュニケーションあれば、会議は不要

 中村工業を表す言葉がある。社是でもある、「信用を重んじ誠実を旨とする」だ。派手なことはせず、真面目に実直に取り組むことを信条とする。これを守ってきたからこそ、これまで続いてきた。会社にとっては、変わらぬ誓いである。

 また社内で共有するのは、相手を思いやる心だ。業容が拡大すれば、内部での言い分も複数出てくる。鳶職人の多くは営業経験が少なく、とかく受け身になりがちだが、社内のその他部門では営業努力を重ねて受注を獲得しているところもある。己だけよければそれでいいというのは通用せず、ほかの仕事にも関心をもち、お互いが助け合って、会社を機能させていることを理解してもらえるよう声をかける。ラグビー経験のある現社長がスポーツを通じて、身につけた思いやりを徹底的に伝えている。一方で、普段のコミュニケーションを活発化させるために、定例会議は極力行わない。生じた問題はその瞬間瞬間に対応してほしいという思いからだ。「組織のトップは明るくなければ」と、社長から伝播する明るさが社員のコミュニケーションを促している。

コミュニケーションは活発
コミュニケーションは活発
熟練の鳶職人たちが手がける見事な足場
熟練の鳶職人たちが手がける見事な足場

売上高100億円達成で見える世界 

 社員220名は正社員の数。先の読めない会社経営からすると、大きな賭けでもあるが、国が推奨する建設会社の姿に近づいている。有資格者、雇用数、基幹技能者数をとっても、全国でも引けを取らない体制が整いつつある。この数字を250までもっていくのが目下の目標。

 ゼネコンと近い距離にいるからこそ、求めるものが伝わってくる。「図面も書けるなら、外装工事もやってほしい」――今後もクライアントの要望に応えるかたちで、業容も活動エリアも拡大させていく方針だ。これらが実現すれば、見えてくるのは売上高100億円。「一度でも突破しておけば、見えてくる世界が違うはず」――チャレンジ精神とモチベーション維持のため、社長は自らに言い聞かせている。受注の多くを占める大手ゼネコンは、将来的に海外シェアを高めていく方向にあるため、海外の建設現場に関わることも予想される。その準備はすでに始まっており、外国人技能実習生も採用を始め、今はベトナム人5名が活躍中。今後も積極的に受け入れていく構えだ。

全国の中村ファンに届けたい

 鳶職の新入社員教育は徹底している。入社すぐに研修センターで2カ月間ほど土木や建築の基礎を学ばせる。そこで最低限必要な資格を取得してもらい、その後鳶職の社内研修を1カ月半ほど行う。若手とベテラン職人が講師役を務める。この間、新入社員の適性を見極めて、配属が決まるのは8月以降となる。「どんな仕事でもまずは続けることが大事」――前述した複数ある事業のなかで、本人と話し合いながら最適のポジションに就いてもらうように配慮している。

 社長の思いには「200年企業」がある。「急成長や急拡大は求めていないが、100年バトンタッチしてきた信頼を次の100年に確実に伝えていく。114年続いたのは社会に必要とされているから。九州にこんな会社があるんだと発信していきたい」――。100年以上続く企業でありながら、「今はまだまだ根を張る段階だ」と中村社長。これから先の10年、20年を見据えて、若手の人材育成を最重要課題とする。絆や技術は目に見えないが、見えなからこそほかに真似ができないものだ。謙虚に技術を磨き続けることで、「中村工業に頼むしかない」と選ばれる時代がくる。

活き活きと仕事に打ち込める
活き活きと仕事に打ち込める

<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
TEL:092-751-9381
URL:http://nakamura-k.com

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