2024年12月22日( 日 )

海洋資源大国・日本の新たな船出(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年1月17日付の記事を紹介する。


 近年、世界各国の研究機関や企業は二酸化炭素の削減技術やCO2の固定化技術の開発にしのぎを削っている。これまでも藻類を活用したCO2の固定化や藻類バイオマスの研究開発も推進されてはいるが、残念ながら生産効率や製造コストの面において大きな課題が未解決であり、いまだ本格的な事業化には至っていない。わが国の将来にとって、自然界との調和や物質循環を基盤とする社会を目指すというのであれば、この分野にこそ資源、人材、資金を投入する価値があるというものだ。

 景気の停滞が続く日本にとって、新たな活路を見出す上で、「海洋大国」という立地条件を冷静に分析し、あらゆる海洋資源の有効活用を官民挙げて追及することが絶対的条件となるだろう。再度指摘しておくが、地球の持つ自然エネルギーの中で、最も高い潜在力がありながら、未開発のままなのが「海の恵み」である。これこそ日本の宝といっても過言ではない。

 このお宝を味方につけるためには、日本近海において効率よく藻類からエネルギーを生産する研究開発体制はもちろん、それ以外の海洋エネルギーとの融合(ベストミックス)のあり方を見極め、全体的なシステムマネジメントの発想で臨む必要がある。でなければ、宝の持ち腐れになってしまう。

 とにかく、海洋エネルギーを活用した次世代発電計画も進行中である。これなどは風力や太陽光発電を上回る豊富な電力を生み出す可能性があり、IHI、東芝、東京大学、三井物産戦略研究所による共同研究が実施されている。

 日本近海を流れる黒潮は世界有数の流れの速さで知られる。言い換えれば、膨大なエネルギーの宝庫だ。現在計画中の発電機の容量は2000kW。これを2000基設置すれば400万kWの発電が可能となり、原発4基分の発電量に相当する。この技術が確立すれば、世界中の強い海流域での導入が促進され、まさに「海洋技術大国」の海外貢献策として新時代を画することになるだろう。

 一方、こうした研究の成果を産業化に結び付けるには、バイオマス・エネルギーや洋上風力エネルギー、さらには潮流発電エネルギー等の海洋エネルギーを最も効率良く確保する仕掛けを構築すべきである。いわば、こうした多様な海洋エネルギー資源をベストミックスの状態で活用できるようにし、さらには海洋からの高付加価値資源を獲得するために大規模な洋上プラットホームが必要となるだろう。

 こうした洋上プラットホームは海洋地域における生産活動のための拠点にとどまらず、将来的には新しい漁場の開発や海洋環境の改善に役立つ海洋インフラ基地としての機能を備えたものが望ましい。なぜなら、わが国はこれまで、メガフロートの実用化を通じて様々な研究成果を蓄積してきているからだ。今後は、新しいタイプの「海洋イカダ」の実現を目指し、基礎研究から実証実験までの連続した開発プロセスを加速させる必要がある。

※続きは1月17日のメルマガ版「海洋資源大国・日本の新たな船出(後編)」で。


著者:浜田和幸
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