2020年、日韓両国の交流は再活性化するか 今こそ九州-韓国の民間、地域間の交流を(後)
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駐福岡大韓民國総領事 孫 鍾植 氏
日韓の社会問題の共有と対話
――韓国は19年4月に「30-50クラブ」(1人あたり国民所得3万米ドル以上、かつ人口5,000万人以上)に加入しており、経済が好調であるかと思いますが、一方で若者の就職先が国内になく、就職のため日本にきている若者がいますが、これは増えているのでしょうか。
孫 韓国は7番目のメンバーとして加入しました。韓国の青年の就職問題は社会問題となっており、一方で日本は求人難であり人材確保が難しい状況にあると思います。韓国の学生は基本的なスペックとして高度な英語力が求められており、北東アジア地域で最も英語力が高いと思います。両国の関係が改善されれば、これらの就職難、求人難という問題も自然と解決されていくでしょうし、解決のために努力していきたいと思います。
――日本の経営者のなかには韓国の優秀な若者を採用したいという方が多くいます。
孫 そうですね。それは本当にお互いにとってよいことだと思います。当館の南宮煥副総領事(以下、南宮)はそれら経済問題を担当しておりますので、直接声をかけていただければと思います。そのようなかたちで両国がWin-Winの関係を築ければよいと思います。
――韓国で就業する日本人もいれば、日本で就職する韓国の方もいます。これらに関して、たとえばビザなど何か制度上の障壁などはございますか。
孫・南宮 障壁のようなものはありませんが、韓国人が日本で就職するに際し、問題となるのは日本の給与水準が下がっており、韓国とあまり差がなくなっていることです。高学歴の人が就業する職種であれば、韓国での給与のほうが高いものもあります。日本に留学している韓国人学生で優秀な人のなかには、学業を終えたら韓国に帰るという人が増えてきています。
――韓国は「30-50クラブ」に加入し、日本を抜いたという意識もあるのではないでしょうか。
孫 そんなことはありません。日本は非常に多くの資産を有しています。確かに韓日両国で物価などに違いはなくなっており、モノによっては韓国の方が値段が高くなっており、また同じ大企業であれば、現在は韓国の方が給与は高いかもしれません。しかし、それらの指標は必ずしも国力を反映するものではありません。
――韓国は情報化が進んでおり、サムソンなどのIT企業が生まれていますが、政府として情報化を推進し、その結果、優秀な技術者を多く輩出しているのでしょうか。
孫 韓国は産業化の面では遅れているかもしれませんが、情報化は進展している方だと思います。韓国では、大企業と中小企業との給与の差が日本と比べずっと大きいです。そのため、大学の入試の競争も大変厳しいです。よい働き先を得るためにより良い大学に入ろうという競争が激しく、これは韓国の大きな社会問題です。日本のようであれば、韓国の競争は今のように激化してはいなかったと思います。韓国では教育は戦争のようなものです。公務員試験の倍率は100倍を超えています。また、親と同居するカンガルー族が増えています。
――日本と同じように韓国でもDINKSの家庭が増えているのでしょうか。
孫 そうですね。韓国社会も同じように少子高齢化が進んでおり、その進行するスピードは日本よりも早いです。日本と韓国が抱える社会の問題はほとんど一緒です。このようなことからも韓日両国は、問題を共有し、対話をし、一緒に解決を図るのにふさわしいパートナーであると思います。
――今年は東京オリンピックが開催されますが、韓国はどのくらい金メダルを獲得する見込みでしょうか。
孫 12年のロンドンオリンピックでは5位であったと思います。マスコミは12〜13位と予測していますが、10位以内に入ることが目標ですね。ただ、テコンドーはいろいろな国で普及しており、韓国人選手が優勝することは難しくなっています。安定的にメダルを有望視されているのはアーチェリーですね。
東京オリンピック後に景気が冷え込むとの予測もありますが、オリンピックを成功裡に開催した国は、経済が一段階成長することが知られています。1964年東京オリンピックが日本の経済復興の引き金になったように、今年の東京オリンピック・パラリンピックも成功し、日本経済が一段階跳躍する契機になると期待しています。
――最後に九州の皆さんにメッセージをお願いします。
孫 韓日両国は昨年、大変な時期を過ごしましたが、これから多少時間はかかるとは思いますが、両国が再び仲の良い隣人になると信じています。「困難な時の友達が本当の友達である」とのことわざがあります。韓国総領事館も両国の関係改善のために最善を尽くしたいと思いますので、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
(了)
【聞き手・文:茅野 雅弘】<プロフィール>
孫 鍾植(ソン・ジョンシク)
1951年生まれ。75年慶熙大学校卒業(86年同大学にて修士号取得)。駐大阪大韓民國総領事館領事、駐日大使館参事官公使、東亜大学教授などを歴任し、2017年12月駐福岡総領事に着任した。大統領表彰を三度受賞。関連キーワード
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