2024年11月26日( 火 )

「検察崩壊元年」ゴーンの反撃(9)

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 ゴーンが無罪となった場合、犯人蔵匿の罪で逮捕・拘留された者はどうなるか。裁判所もゴーンの裁判と併合・並行して審理する場合には、ゴーンが無罪で犯人蔵匿犯が有罪となることはないが、そもそも犯罪者でない者を検挙したもので、行為が犯罪構成要件に該当しないという意味の無罪ではないから、検察官の不法行為の責任は重大である。

 ゴーンが国外に滞在する現在、ゴーン事件と併合・平行に犯人蔵匿事件を審理することはできないから、結局、検察の捜査は最初から空振りとなることは明白である。

 検察は速やかにゴーン事件の公判手続きを進行させ、一刻も早くゴーン事件に黒白をつける義務がある。犯人蔵匿罪は3年以下の懲役だから、公訴時効は5年である。ゴーン事件の決着をつけてからでも十分な時間的余裕がある。その意味で、現時点での犯人蔵匿事件の捜査はスタンドプレー以外の何物でもない。

 第二に問題となる構成要件は「蔵匿」である。

 現在、ゴーンは全世界にむけて所在地を明らかにして、事件についての反論権の行使としての活動を行っている。この状態を「蔵匿」というのか。あまりにも非常識な日本語の解釈ではないか。普通に本条でいう「蔵匿」とは司法官憲にその犯人の所在を隠蔽することであり、ゴーンの出国に関わった人々はゴーンの移動に関与したにすぎず、

 ゴーンが司法官憲からその身を隠蔽することを予期予見して、移動に加勢したとは思われない。ましてやゴーン自身が身を隠蔽しておらず、およそ「蔵匿」行為とはいえない。

 しかし、現実に検察はゴーンの東京の住居を家宅捜査している。これがすでに法律的にも冤罪となることを国民はしっかりと理解しなければならない。

冤罪を産生し強化する刑事法学界

 日本の刑事法学は、学者の実態がすでに冤罪構造となっている。検察の解釈を支持する学説、裁判官(判例)を支持する学説、被告人弁護人を支持する学説という分布を示している。

 そして、検察を支持する学説と裁判官を支持する学説が同一で多数説となっているから、検察官司法は学説のレベルで完成している。これは、学者と称する人々が検察官出身者、裁判官出身者が相当数存在することからも裏付けられる。これは日本の法律学が結局は価値判断に基づく多数決で成り立っている本質に由来する。

 ゴーンの今回の国外脱出は正式な出国手続きが取られていないから明らかに不法出国・密出国である。従って、密出国罪が成立することは間違いない。しかし、検察はすでに出国したゴーンの密出国罪の捜査をしても本人を処罰することはほぼ不可能だから、密出国に協力した人間に的を絞って捜査を開始した。しかも罪名は犯人隠避罪である。

 本来、捜査するなら、密出国罪の幇助罪でなければならない。しかし、主犯を刑事手続きにかけることなく共犯(幇助犯)を刑事手続きにかけることは本末転倒であるから、裁判所も認めないだろう。そこで、密出国の協力者が本犯となる犯人蔵匿罪での捜査となっている。

 しかし上述のように犯罪構成要件の解釈は極めて杜撰である。

 ゴーン事件そのものが類似の構造をしている。極めて形式犯でせいぜい法人を処罰する程度の罰則をもつ金融商品取引法の有価証券報告書重要事項虚偽記載罪を生身の人間であるゴーンとケリーに適用し(西川が除外された不条理)、その逮捕拘留中に本丸である会社法違反である特別背任罪に関する自白をさせて処罰しようとした。

 しかし、ゴーンは身に覚えのない検察官の見立てに沿う自白をしなかったから、第二の被疑事実である特別背任罪の公判は開始の予定さえ立っていないといわれる。この全体像が自白偏重の人質司法と世界から批判を受けていることを日本の報道機関・報道記者らはまったく理解していない。

(つづく)
【凡学 一生】

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