日本の未来を変えるか!数々の社会事業を立ち上げ(中)
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NPO法人創造支援工房フェイス 代表理事 池本 修悟 氏
NPO法人創造支援工房フェイス代表理事・池本修悟氏は、大学時代からNPO(非営利団体)の事業サポートや社会活動を行う人たちのネットワーク化などさまざまな社会事業に取り組んできた。東日本大震災では、762ものNPO団体が参画した東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)の立ち上げにかかわる。2016年には(公財)日本ユースリーダー協会(会長:三村明夫氏)が主催する若者力大賞のユースリーダー支援賞を受賞した。池本氏が自らの言葉で社会事業にかける思いを語る。
中間支援活動に本格的に参画
転機は2008年に起こりました。それまで理事として関わっていたNPO事業サポートセンターの専務理事を前任者の急病がきっかけで引き受けることとなったからです。この時期から本格的にNPOの中間支援に取り組むことになりました。NPO事業サポートセンターは阪神淡路大震災がきっかけに立ち上がった草の根活動団体の法人化や運営の支援が原点の団体です。NPO設立マニュアルや運営サポートのインストラクターを養成し、団体支援を行っていました。
また一方で「2007年問題」とも言われた団塊シニアの地域デビューを応援する地域創造ネットワーク・ジャパンという浅野史郎さんが代表理事をされている姉妹団体が当時存在したのですが、私が専務理事を引き受けたころこの2団体を合併させる議論をしていました。
そのようななか、2011年3月に東日本大震災が発災。合併については先送りするのではなく、逆にこのタイミングだからこそ進めるべきとなり、7月に社会的経済セクターが法人格を超えて連携して課題を解決することを目指し(一社)ユニバーサル志縁社会創造センター(現・〈公社〉ユニバーサル志縁センター)を設立しました。
ただ、設立当初は構成団体との関係構築ができておらず、たとえば震災支援について理事団体の労組や生協はそれぞれパワフルな震災支援活動を行っていましたが、具体的な連携を行えているわけではありませんでした。理事会や総会などでは震災復興や就労支援など必要性を感じるテーマを提起するのですが、具体的に理事や会員との連携は部分的にしか進まず、本来団体として取り組みたい草の根の活動団体への応援を進めれば進めるほど財政は厳しくなり、予算を確保するために行政の補助事業を取りに行くなどボランティア事業のジレンマを感じる日々でした。
2013年に出会った市民活動団体応援の技法
そのような苦労していた時期、2013年に出会ったのがコミュニティ・オーガナイジングという公民権運動などで活用された市民活動団体を応援する技法でした。ハーバード大学で一学期間かけて教える内容なのでいくつもポイントがあるのですが、大事な点としては、何らかの社会課題に取り組む際に、課題に直面している当事者自らにパワーがあり、その人たちが立ち上がるのが大事だという考え方です。
可哀そうな社会的弱者に対して手を差し伸べるという上から目線の発想とは一線を画しています。具体的には東日本大震災後、岩手で産後ケアのサロンを行っていた「まんまるママいわて」という助産師さんのチームのケースがわかりやすいので紹介します。彼女たちは不定期にサロン活動を行うのでは、子育てをしているママたちに安心してきてもらえないという問題意識から「産前産後ケア施設」をつくりたいと考えるようになりました。
しかし、「宝くじでもあたらないかな」と行き詰まりを感じていた際に、私が主催したコミュニティ・オーガナイジングの合宿に参加してもらいました。そこで、ワークショップを通じ、助産師だけではなく、当事者(お母さんたち)にパワーがあることに気づいたのです。
ワークショップ後、継続してコミュニティ・オーガナイジング・ジャパンのメンバーが代表の佐藤美代子さんへの伴走支援を行い、佐藤さんはお母さんと1対1のミーティングを行うようになりました。その結果、事務の得意な人、マッサージの得意な人、お菓子づくりが得意な人など見つけ出し、チームを再構築して、目標として掲げた産前産後ケア施設を完成させることができました。
この手法を使い、私自身も当センターの活動のなかで積極的に1対1の対話の機会をつくり、共通する目的を見出し戦略的に活動することを意識するようになり、中長期計画のため1人ひとりの理事の意見を今まで以上に聞くようにしました。すると関心事項は複数あり、一見バラバラのようではあったのですが、共通して「子どもの貧困」について問題意識をもっていることがわかってきました。ただし、それぞれの団体が子ども食堂やフードバンクなどにすでに取り組まれており、同じことを当センターで行っても意味はないと考えました。
そのような時に、児童養護施設を運営している代表理事の池田徹さんから「社会的養護」についてこのセンターで取り組むのはどうかという意見をもらいました。皆さま虐待の問題については関心をもっていたのでそれでいこうという総意を得ることはできました。
しかし私も含めて理事の皆さまも社会的養護の実情について理解をしているわけではありませんでした。そこで、2016年内閣府子どもの貧困対策検討会座長をされていた宮本みち子氏に参画していただき「社会的養護下にある子の自立を考える研究会」を立ち上げ学ぶことからスタートさせました。
(つづく)
<プロフィール>
池本修悟(いけもと・しゅうご)
大阪府豊中市出身、41歳。NPO法人創造支援工房フェイス代表理事。(一社)社会創発塾代表理事。(公社)ユニバーサル志縁センター専務理事。
高校時代、阪神淡路大震災に際し、何もできない自分に歯がゆさを感じ、大学進学以降、NPOの事業サポートや社会活動を行う人たちのネットワーク化などさまざまな社会事業に取り組んできた。東日本大震災においては、762団体ものNPO団体が参画した東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)の立ち上げにかかわり、いざというときの底力と継続的な連携の難しさを思い知った。そこで緊急時だけでなく普段からセクターを超えて協働できる若者が集い学び合うコミュニティ「社会創発塾」をプロデュース。2016年には(公財)日本ユースリーダー協会(会長:三村明夫氏)が主催する若者力大賞のユースリーダー支援賞を受賞。関連記事
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