2024年12月23日( 月 )

なぜCOVID-19はこれほど恐れられているか?〜過度に恐れる必要はないが、決して敵を甘くみてはいけない!(中)

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大阪大学元総長 平野 俊夫 氏

結論

1:何もせずに放置すると終息するまでに、日本では最悪、70万人から250万人、世界では1.9億人が死亡する。この数字は第二次世界大戦の死亡者(世界全体で6,000~9,000万人、日本では300万人)に相当するかそれを上回る。

2:ワクチン開発は終息を早めるための要だが、開発に少なくても2、3年あるいはそれ以上かかる(1年で可能というのは気休め)。

3:治療薬の開発により死亡者の数を減らすことができるが、新しく治療薬を開発するためには5~10年はかかる。既存の治療薬のなかに効果があるものがあれば最短数カ月以内に治療現場で使用可能になる可能性がある。

4:今後、終息までに1~2年はかかるので、長期戦(1万m競争)と考えて心の準備や日常生活を可能な限り正常に続ける工夫、そして仕事も可能な限り正常な活動ができる個人的な工夫(会社/組織/国としての工夫は当然必要)をしていかなければならない。 
この間、各地域では流行の波を起こしながら、世界中のどこかで流行している状態が続く。従って日本で流行が終息したとしても海外からウイルスが流入するし、国内でもまた流行が起こる。このように流行の波をつくりながら最終的に国民の30~60%が感染して免疫を獲得するまでは終息はしないと考えられる。

5:個人的には、感染防御に努める。まずは丁寧な手洗いを頻繁に行う。可能な限り家庭に持ち込まないように玄関でアルコール(70%エタノールか0,05%次亜塩素酸)で手を消毒してから家に入り、さらに石鹸で丁寧に手洗いする。食事の前、料理の前、その他機会があればこまめに石鹸で手洗いをする。もちろん勤務先でもいつもより頻繁に手洗いする(可能な限り石鹸で)。

6:以下の3条件を避ける。「密閉空間(換気をする)」「近距離での会話」「手の届く距離に多くの人がいる」。

7:このウイルスは細胞膜が脂質でできているので界面活性剤(石鹸)で簡単に破壊される。また飛沫感染なので上記の3条件を守るとともに、手洗いを頻繁に行えば感染するリスクを限りなくゼロにできる。

8:日頃の生活において睡眠を十分にとるとともに、過労を防ぎ、栄養価の高い食事に心がけて免疫力を十分に維持することを心がける。

9:幼児や若い人は発症しないか軽症ですむという点は、未来に希望がある。しかし幼児や若い人でも重症者や死亡者が出ているので安心はできない。いったん重症になれば人工心肺を装着しなければならないほど危険な状態になる。

10:幸いにも「はしか」のように空気感染ではなく、飛沫感染なので、手洗いを励行して、3条件を厳格に実行すれば感染は防ぐことが可能。過度に恐れる必要はない。あくまでも冷静な行動が求められる。

結論に至る理由

1:死亡率が高い(季節性インフルエンザは0.1%に対して新型コロナウイルスは4.6%(0.5%~10%))

 季節性インフルエンザは、たしかに世界中で25~60万人が毎年死亡する。また日本でも3,000人から1万人が毎年死亡する。日本では毎年1,000万人ぐらいが季節性インフルエンザに感染していると推測されています。すなわち死亡率は0.1%です。これに対して、新型コロナウイルスの死亡率は現時点で世界の平均値は4.6%(20308/440295X100=4.6%)です。もちろんドイツの0.5%から医療崩壊に陥っているイタリアの10%まで、それぞれの国の医療体制などの異なりにより死亡率は異なりますが、世界中を平均すると現在4.6%です。ちなみに日本では3.5%です。PCR検査を増やせば日本国内の感染者数が増える結果、死亡率は減るとは思います。

2:ワクチンが存在しないことの意味

 免疫学的にはこのような感染症が終息する条件は集団免疫閾値(Herd immunity threcshold:ワクチンや自然感染により集団が免疫を獲得する割合)で決まります。この割合は以下の式で決まります。

H=(1-1/Ro)x 100
H:herd immunity threshold(集団免疫閾値)
5Ro:basic case reproduction rate(1人の患者が何人に感染させるかの数)

 たとえば、新型コロナウイルスのケースで、Roを2.5人とすると、(1-1/Ro)x 100=(1-1/2.5)x100=60%となります。もし1.5なら33%です。1なら、0%となり感染が集団に広がることはありません(1人が1人に感染させても、元の人は免疫を獲得して治癒するか、あるいは死亡する)。1.1人以上なら感染が集団全体にひろがり、Roが大きければ大きいほど集団免疫閾値は大きくなります。

(つづく)

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