将来の上場を見据え労務環境を整備～働いて楽しいと思える会社に（3）

（株）タケノ　代表取締役社長　竹野　孔　氏

人材育成の要諦はやる気の種を植えること

　――採用状況についてうかがわせてください。

　竹野　社員の新卒採用において、大卒よりも高卒の採用数を増やしています。昨年は全33人中32人、今年は43人中40人が高卒です。5年ほど前から大手就職サイトでの大卒の応募が激減し、高卒の採用に舵を切りました。普通高校の卒業生が多く、九州一円から募集しています。きちんと選考をするためには多くの人に応募してもらうのが望ましく、給与・待遇面を良くしています。それで、選考を行っています。

　――人手不足のなか、高校生をそれだけ採用されているのはすごいですね。業種を問わず中小企業が人材を採用するに際して、やるべきことは何だと思われますか。

　竹野　一言でいうと、待遇を良くすることでして、それをしないで応募者が来ないといっても始まりません。就職人口という限られたパイがあるなかで、求職者が最初の時点において何を基準に選ぶかというと、職種、業種、会社のカラーなどもありますが、何といっても給与であり、求職者は最初に給与が何万円以上ということで検索をかけるわけです。また、アルバイトの時給も上げており、いずれも検索時に見てもらえるように待遇を良くしています。また公平な評価制度も整備しました。

　――新入社員が一人前に成長するまで、どのくらい時間を必要としますか。

　竹野　それは人により違うので一概にはいえませんが、当社では入社前に2週間の研修を行います。最初は3日、合宿で座学、マナーの特訓を行い、その後はいくつかの店舗にわかれて実地研修をします。4月1日には現場に出しても大丈夫なレベルに到達できるよう研修を行います。なお、昨年の新入社員で退職したのは5人で、採用人数を考えれば少ない方だと思っています。入社後、フォローアップ研修を1年に3回開催し、集合研修、懇親会などを行っています。

　――新入社員にバディをつけているのでしょうか。

　竹野　店舗のなかで師弟制度をつくり、1人ひとりに指導係をつけています。また、指導係とは別に店舗のなかでは話しにくい困りごとがある際、相談できるメンターを置いています。
　一番大事なことは、社員当人に仕事に対するやる気が芽生えるかどうかです。芽生えさえすれば、そんなに構わなくてもよいと思います。こちらから社員に勉強するように言ったところで、当人が自身のやる気に火をつけられなければ勉強しないでしょう。そこで、社員がやる気になるような仕掛けをこちらでどんどんつくっていく必要があります。インセンティブをつけていますが、評価制度を透明に、明確にしておくことも1つのやり方だと思います。

　現在の社員の多くは欲をあまりもたず、やる気を出させるのに難しさを感じますが、自身を成長させようとする意識、たとえば店舗のなかで店長を目指すというような目標があれば、やる気が出てくると思います。

　――ジョブグレード制度の導入が1つの転機になったということですが、定年までのロードマップをどのように設定されているのでしょうか。

　竹野　社員1人ひとりに合わせたキャリアプランの作成中なのですが、まだ手が回らずに大枠でのキャリアプランのみを提示できている状態です。1人ひとりの次の到達点と期限を可視化したプランを作成し、それをお互いに共有するという段階へと進めていくつもりです。とはいえ、社員が完全に成長するのを待っているとなかなか出店できないため、社員の成長よりも出店のスピードのほうが速いです。店長でも仕事を100％できるわけではないですから。

　――社員の定着については評価制度などが貢献しているのでしょうか。

　竹野　評価制度がきちんとしているから定着するということでも、給与が良いから定着するということでもないと思います。もちろん給与が安ければ辞めますし、待遇が悪いとなかなか入社はしてくれません。ただ、定着するかどうかに関しては社員が仕事を楽しいと思えるかどうかが重要であり、そう思ってもらえるように取り組んでいます。

　――現在の従業員数を教えてください。また、外国籍の従業員はどのくらいいますか。

　竹野　現在社員は120～130人、アルバイトは900人で、計1,000人以上の従業員がいます。そのうち、外国人は5カ国約120人で、内訳は約100人が店舗、約20人が工場にいます。店舗は中国人、ネパール人、ベトナム人、工場はネパール人、ベトナム人が多いです。

　――日本人が残業を避けるようになってきているなか、たとえば外国人従業員のほうが熱心で残業させてくれと言ってきたり、スキル面でも優秀であったりするという話も聞きます。

　竹野　国によってとくにそういう違いはなく、人によります。当社ではネパール人の店長も1人います。

（つづく）

【茅野　雅弘】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：竹野　孔
所在地：福岡市博多区博多駅南4-18-27
設　立：1979年4月
資本金：3,000万円
売上高：（19/3）26億900万円

＜PROFILE＞
竹野　孔（たけの・とおる）
1955年6月8日生まれ。76年8月、大学を中退し焼き鳥屋を創業。福岡を中心に居酒屋など飲食店を多数展開。趣味はハーレーでのツーリング。