2024年11月22日( 金 )

不法投棄の産廃業界を変える! 建設産廃で減量化・リサイクル化率98%(2)

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 再開発や建替え工事が進む都心では、つくられると同時に現場で多くの産業廃棄物が発生している。私たちは「ゴミを捨てる」ことはあっても、捨てたゴミがどこに行くのかを見ることはほとんどない。しかし、捨てたゴミは消えず、必ず「処分」が必要になる。ゴミ問題を解決すると考えられている「リサイクル」が、なかなか広がらないのはなぜなのか。建設廃棄物の行方を、産業廃棄物中間処理業の石坂産業(株)専務取締役・石坂知子氏に聞いた。

減量化・リサイクル化率98%の産廃処理技術

 日本の国土は狭い。陸地にある最終処分場も無限ではなく、いつかは埋まってしまう日が来る。石坂産業が扱っている廃棄物は、東京都心からの廃棄物が約50%、その他の関東エリアからの廃棄物が約50%だという。中間処理業の石坂産業が受け取り、再資源化(リサイクル)して、建設資材として再利用する。

 「今の減量化・リサイクル化率は約98%だ。建設系廃棄物のリサイクルで一番の『壁』になるのは、素材別、サイズ別に分けることだ。そこで破砕機、分別スクリーン、風力選別機、比重差選別機などの独自技術を開発した。再資源できるものとできないものを分別し、粒子の大きさや密度で分ける分級を可能にした」と石坂専務は話す。これまでの手を使った選別から、機械を組み合わせた分別・分級技術を開発し、トラブル停止「0(ゼロ)」にするまでに5年かかったという。

 比重差選別とは、空気を当てて飛ばすと、軽いものが重いものより遠くに飛ぶという物理的原理を使って、機械で素材ごとに分別する方法だ。自社の独自技術を使って装置を組み合わせた工程ラインを設け、再資源化の可否を見分けている。「時間が経つと腐敗する綿のような紙くずや、木くずが混ざった細かい土砂など、今の技術では再資源化できない残り2%の廃棄物は最終処分場で埋め立てている。100%再資源化を目指して、土砂から紙くずや木くずを取り除く技術を某大学と共同研究中だ」(石坂専務)。

廃コンクリートリサイクルプラント

 廃コンクリートは選別・破砕し、造成工事や埋め戻し材として再利用、木材は製紙用やボード用などの木材チップに生まれ変わる。廃プラスチックは、紙と合わせてRPF(固形燃料)をつくる。燃料として搬入した工場で燃やすことで熱を回収し、タービンを回して発電する。産業廃棄物のリサイクル率は約52%だ(環境省の調べ)。中間処理業の業界全体でもリサイクル率を上げようという動きがあり、同業他社からの工場見学も多い。産業廃棄物処理フローも公開しているが、見るだけでは真似できない独自技術だと考えられている。 

 産業廃棄物の不法投棄でも、建物を解体したときに土地に残る土砂が混ざった「土砂系混合廃棄物」は素材もわからずトレーサビリティが取れないため、一番の問題になっているという。木材や廃コンクリートは分けて解体することが定められた法律があるが、その他の残渣が地面の土砂と混ざった土砂系混合廃棄物は分別が定められていないためだ。石坂産業では、土砂系混合廃棄物を分別分級できる技術があるため、土砂系の建設混合廃棄物から回収し、選別した0.07mmの細かい土砂を固化・造粒した盛土材「NS-10」を自社で製造している。 

 一方で、建設系産業廃棄物のリサイクルが広がりにくいのはコストの問題がある。中国などで製造した新品の建設資材と比較すると、国内での再資源化工場のコストは高いため、リサイクル資材は価格帯が高くなる。価格競争では新品が優位になるため、リサイクル資材販売の売上のみで再資源化コストを回収することは難しい。 

 「脱産廃を掲げ、これまでの産業廃棄物業の選別、処理方法ではなく、製造業と同じ方法で管理、処理している。同業他社からは、これだけ細かく選別し、設備投資していて、利益が出せるのかといわれるが、環境に配慮した処理をすることで産業廃棄物業界のこれまでのイメージを変えていきたい」という石坂専務の思いがある。 

 産業廃棄物処理業界の売上高は5兆円規模だ。企業数では、廃棄物収集運搬業が約90%、廃棄物中間処理業が約9%、最終処分業が約1%だ。上位10社の売上でおよそ2,000億円弱を占めるとされる。産業廃棄物処理業界では、売上高100億円を超えるのは約10社だ。ほとんどは、売上高4億円前後で社員20名未満といわれている。都道府県ごとの許認可が必要な廃棄物処理業は、地域密着型だ。各都道府県の許可をもっている事業者のM&A(合併と買収)が、事業の規模拡大の主流になっている。

(つづく)

【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:埼玉県入間郡三芳町上富1589-2
代 表:石坂典子
設 立:1971年
資本金:5,000万円
売 上:(19/8)57億9,400万円

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