2024年11月24日( 日 )

傾斜のマンションで匿名文書が配布される!(2)

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 ――若築建設は 支持地盤の深さが一定でないことを認識しているのでしょうか?

 仲盛 若築建設は 当然 認識しているはずです。テレビで説明されていたような「地中の支持地盤の深さが一定」などということに対しては いくらでも反論できます。私が若築建設の立場であっても、このような論法で反論します。

 ――放送では、調査を担当した岩山建築士の「10本の杭が支持層に未到達。放置は危険」という意見を紹介していましたが、現実的に危険はあるのでしょうか?
 仲盛 地盤に基づく杭の支持力を算出する方法は、極限まで支持できる重量を計算し、これの3分の1を杭の長期(常時)支持力とします。つまり、杭の長期支持力には3倍の安全率があるので、単純にいえば 3本のうち1本の杭が支持地盤に到達していれば、常時の建物重量は支えることが、計算上は可能ということになります。

 ――なぜ、3倍もの安全率を見込むのですか?
 仲盛 鉄骨や鉄筋やコンクリートなどの材料も3倍の安全率を見込むよう建築基準法などで定められています。製品や施工状況のばらつきに備える意味もあるかと思います。たとえば定員10名のエレベーターに20人ぐらい乗ってもロープが切れることはありません。しかし、30人以上が乗ればロープが切れる可能性が高くなります。

 ――10本の杭が支持地盤に到達していないことが 傾斜の原因と考えられないのですか?

 仲盛 杭が支持地盤に届いていないことは、マンションが傾斜した原因の1つとして考えられます。しかし、先ほど話したように、杭の長期支持力には3倍の安全率があります。また、支持地盤の深さも一定ではありません。

 数十本の杭のうち10本が支持層に届いていないことだけが傾斜の原因であると断定することは極めて難しいことです。マンションが傾斜した原因が杭10本が支持地盤に未到達であることが唯一無二の理由であることを立証する義務は住民側にあるからです。

 当然のことながら、若築建設を含む販売JV側は 住民側に立証を求めるでしょう。このような初歩的な論法は、住民に寄り添っておられるテレビでも有名な岩山建築士は十分過ぎるほど理解されていると思います。岩山建築士が、単に調査だけを請けているのではなく、住民へのコンサルタント的な立場であるならば、住民側に立ち、的確なアドバイスをすべきです。岩山氏は、テレビ局を呼ぶなど 積極的にマスコミに情報を伝えているとのことなので、しっかりとした戦略に基づき、もっと決定的な弱点を突くべきだと思います。

 ――マスコミといえば、当社ニュースサイトNetIBNewsやテレビ・新聞で報道されたことにより マンションの資産価値が下がったという特別理事らの声があるそうですが・・・。

 仲盛 資産価値うんぬんと言われているのは、六番館のことしか考えていないからです。構造スリットの問題など、すでに全棟の問題となっているのです。資産価値の低下を防ぐために 構造スリットの未施工などの不具合・耐震強度不足を隠してマンションを売却することは詐欺同然であり、Bさん一家と同じ被害者が出ることになります。

 ――資産価値が低下すれば 住宅ローンの担保価値も下がりますよね?
 仲盛 施工の瑕疵などにより担保価値が下がれば、追加の担保を設定するか 一括返済を迫られます。しかし、住宅ローンが提携ローンであれば、金融機関もマンション販売会社と同罪になります。マンション販売会社とともに金融機関も賠償義務を負うという判例があります。

 ――若築建設が謝罪の意向を示した背景には、今 仲盛さんが話されたような考えがあるのでしょうか?

 仲盛 若築建設の考えは 当然のことながら 第三者である私にはわかりません。ただ、私が若築建設の立場であれば、このように反論するだろうと1つの例を示したまでです。私は、若築建設やマンション販売業者をかばう気持ちなど 毛頭ありません。引渡しあと20年という除斥期間を過ぎて、急に謝罪の意向を示したことや、管理組合側の調査に便乗して若築建設も調査を行ったことなどから、双方に何らかの密約的な合意があったと思える面もあります。そうだとすれば、若築建設主導の出来レースと言っても過言ではありません。

 住民側(全棟を含む)が、出来レースではなく 徹底的に戦うのであれば 私が述べたことを考えておいた方がベターだと、私の経験則を基に、住民のために述べているだけです。

(つづく)
【桑野 健介】

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