事業環境悪化にコロナが追い打ち~暗雲漂うブライダル業界(2)
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近年、若者人口減少や未婚率の増加などで国内の婚姻件数が右肩下がりで推移するなか、苦戦を強いられているのがブライダル業界だ。そこに追い打ちをかけるように、今年に入ってから“コロナショック”が勃発。この影響で結婚式・披露宴の延期や中止が続出し、業界としては致命傷となりかねない事態に陥っている。業界各社はこの苦境を生き延びることができるのか――。
上位企業は善戦
一口にブライダル業界といっても、その裾野は幅広い。自社で結婚式場を有し、その運営を行いながら結婚式・披露宴の施行サービスを行うところのほか、ホテル事業者が宴会事業の1つとして結婚式も取り扱っているところ、互助会組織として葬祭場と結婚式場の両方を運営しているところなど、さまざま。レストランなどの飲食事業者でも、結婚式を行うところもある。また、結婚式用の衣裳やヘアメイク、挙式プロデュース、写真・映像、装花などの挙式に付帯するサービスのほか、さらには結婚式を挙げる前段階として男女のマッチングを行う結婚相談所運営や婚活支援サービス事業者などもブライダル業界に含まれる。【表】はブライダル業界関連の企業のうち、結婚式場運営などをメインに行っているところと、結婚相談所運営や婚活支援サービスをメインに行っている大手企業をまとめたもの。数字は直近2期(予想を含む)で比較した。
結婚式場運営では、(株)テイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)が売上高トップを走る。同社は、国内ウェディング事業および海外・リゾートウェディング事業を主に手がけるほか、婚礼に関わる周辺サービスも展開。また、16年12月には子会社・(株)TRUNKを設立して、ホテル事業も開始している。創業以来、オリジナルウェディングにこだわる同社は、とくに一軒家貸切型の「ハウスウェディング」を強みとしており、年間約1万2,500組(18年度)の結婚式を実施。直近では16年3月期以降は4期連続で増収となり、毎期利益を確保するなど、逆風の業界環境のなかでも気を吐いている。
T&Gを追随し、売上高2位の位置にいるのが、(株)ツカダ・グローバルホールディング(以下、ツカダGHD)だ。同社は、欧米の邸宅を思わせるパーティ会場を貸切にして行う「ゲストハウスウエディング」を主体としたブライダル事業のほか、ホテルやレストランの運営、ブライダルコンテンツ事業として、衣装やヘアメイク、挙式プロデュースなどを実施。02年12月期の売上高82億5,300万円から、19年12月期の売上高611億2,100万円まで毎期連続増収を続けるなど、安定的な成長を重ねている。
2位のツカダGHDとは少し開きがあるが、売上高3位がワタベウェディング(株)。同社は海外挙式や国内リゾート挙式などのリゾートウェディング事業に強みをもち、このカテゴリーでの実績は業界№1をうたっている。直近の19年12月期は決算期変更にともなう9カ月の変則決算となっているが、近年の業績は売上高400億円台で一進一退しながら推移。うち14年3月期から2期連続で最終赤字を計上した以外は毎期利益を確保するなど、比較的好調だ。
売上高4位の(株)エスクリは、特定のスタイルにこだわらず、ホテル、レストラン、ゲストハウス、専門式場と多彩な式場での事業展開を行っている。03年6月創業と業界においては後発ながら、集客力や分析力を武器に急成長。創業から10年足らずの12年11月には東証一部への上場を成し遂げ、以降も毎年増収増益を重ね続けている。
5位のアニヴェルセル(株)は、紳士服大手の(株)AOKIホールディングスの子会社である。ヨーロッパをイメージしたチャペルやパーティー会場を備えた式場を全国13カ所展開するウェディング事業のほか、プロポーズのプロデュースや、エンゲージリング・マリッジリングといったジュエリーなども取り扱っている。決算数字については親会社のAOKIホールディングの「アニヴェルセル・ブライダル事業セグメント」のものを示しているが、直近はやや右肩下がりながら、ほぼ横ばいで推移。不採算店の閉鎖などを行いながら、営業効率改善に努めている状況だ。
6位は、上位企業のなかでは唯一九州に本社を置いているアイ・ケイ・ケイ(株)だ。同社では、九州を基盤として地方都市を中心に式場を展開。地方都市は競合が少ないうえにランニングコストを低く抑えることが可能で、さらには都会に比べて招待客数が多い傾向にある。こうしたポテンシャルの高いエリアで、クオリティの高い結婚式・披露宴を提供するという、いわば“ブルーオーシャン”戦略を進める同社は、13年1月の東証一部上場以降も安定的な増収と利益確保で、成長の歩を止める様子は見られない。今後は高めたブランド力を武器に、関東エリアへの進出も図る。
このように、結婚式場運営を行う上位企業においては、好調ぶりを発揮している。各社それぞれが独自の強みをもち、その領域のなかでの優位性を高めることによって、厳しい業界環境のなかでも善戦しているようだ。しかし一方で、業界全体としては疲弊が進んでいるのも事実。少ないパイが上位企業に集まることで、寡占化が進みつつあるともいえよう。
(つづく)
【坂田 憲治】
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