【コロナと対峙する企業】アパホテル~安倍首相の“応援団長”コロナ軽症者受け入れのため、新築した横浜の国内最大規模ホテルを1棟貸し(中)
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政府は新型コロナウイルスの感染拡大で、病床が逼迫している状況に対処するため、無症者および軽症者などはホテルなどで受け入れるよう都道府県に体制づくりを求めた。国内最大のビジネスホテルチェーン、アパホテルの創業者、元谷外志雄氏は、知る人ぞ知る安倍晋三首相の”応援団長”である。いち早く、一棟借り上げ方式による宿泊療養施設を受け入れた。その事情とは?
国内ホテルの20%のシェアを目指し、次々とホテルを建設
アパグループ代表の元谷外志雄氏は、アパホテルの開業時から全国展開するつもりで、ホテル事業に参入した。当時、真っ先に考えたのは、リピーターを増やすことだ。1週間で多いのは休日ではなく平日。平日にホテルを利用する人は誰か。ビジネスマンだ。
ビジネスマンの宿泊代は経費予算内で企業が払う。ビジネスマン1人ひとりに出張でアパホテルに泊まってもらうためには、何か決め手がなくてはならない。そこで、アパホテルを利用すると決めた客に、お礼としてキャッシュバック付会員システムを提供した。結果、アパホテルはリピーターが増えていき、市場シェアの10%を占めるまでになった。
東京オリンピックの需要に向けて、ホテル業界は百花繚乱の状態にある。20年のオリンピック開催後に訪れる”ホテル不況”が、拡大路線を取る好機と捉えた。アパホテルは現在の市場シェア率を10%から20%まで拡大する計画を立てた。次々とホテルを建設していった。
アパホテルネットワークとして全国最大の656ホテル、10万1,402室(5月14日現在)を有するまでになった。
ライバルの東横インは、316ホテル、6万8,509室(5月1日時点)だ。アパグループの2019年11月期の連結決算は、売上高1,371億円と過去最高を更新するとともに、経常利益は335億円と、3年連続で300億円を超えた。
2025年11月期には、グループ連結売上高2,000億円、経常利益500億円、提携ホテルを含む客室数15万室を目指し、疾走中だった。アパホテルは東京五輪組織委員会から3万6000室分を予約
新型コロナウイルスがホテル業界を直撃した。13年9月の東京五輪決定以降、東京23区は空前のホテル建設ラッシュに沸き、19年末までに2645軒まで増えた。
だが、コロナの感染拡大で、東京五輪は延期。東京五輪に訪れる外国人を当て込んで、建設に突き進んでいたホテル業界は大打撃を受けた。オリンピックイヤーの2020年、訪日外国人4,000万人を見込んでいた政府目標は、今となっては夢物語。1,000万人台に急落することは避けられない。アパホテルも拡大路線をとってきた1社だ。
アパホテルは、東京2020組織委員会からの依頼を受けて、関係者用の部屋を用意していた。アパホテルの元谷芙美子社長が、テレビに出演して語ったところによると、アパホテルは3万6,000泊以上、組織委員会から予約をされていた。仮に1泊1万円として計算してみると、3万6,000室分の宿泊料は3億6,000万円となる。これが放映されると、ネットは大いに盛り上がった。アパグループ代表の元谷外志雄氏は、安倍晋三首相の応援団「安晋会」の副会長だ。安倍首相と関係が深い企業ということを忖度して、組織委員会がアパホテルに大量予約したのではと疑惑の目で見られた。
しかし、アパホテルは東京都内で60ホテル、1万5,000室以上あり、オリンピック期間中16日間で提供できる客室数は延べ24万室以上となり、3万6,000室はその内の約15%にすぎず、組織委員会への提供数としては他ホテルより少ない。
コロナの影響による旅行や出張の自粛で、都内のアパホテルの3月の稼働率は50%に激減、厳しい状況に立たされた。この時、”助け船”を出したのが安倍首相だ。軽症・無症者向けにホテルを1棟借り上げることだ。
政権に近いジャーナリストの田崎史郎氏が、4月6日放送の『ひるおび』(TBS系)で、「安倍総理がアパホテルの経営陣に電話して、お願いしますと直談判」したと暴露した。
安倍首相が自分に近いアパホテルを優先的に「有償の受け入れ先」として打診したのだから、これまた”アベ友優遇”と受け取られた。(つづく)
【森村 和男】
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