【コロナと対峙する企業】アパホテル~安倍首相の“応援団長”コロナ軽症者受け入れのため、新築した横浜の国内最大規模ホテルを1棟貸し(後)
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政府は新型コロナウイルスの感染拡大で、病床が逼迫している状況に対処するため、無症者および軽症者などはホテルなどで受け入れるよう都道府県に体制づくりを求めた。国内最大のビジネスホテルチェーン、アパホテルの創業者、元谷外志雄氏は、知る人ぞ知る安倍晋三首相の”応援団長”である。いち早く、一棟借り上げ方式による宿泊療養施設を受け入れた。その事情とは?
外志雄氏と芙美子さんは信金の仲間
元谷外志雄氏は62年、石川県立小松高校を卒業し、小松信用金庫(現・北陸信用金庫)に入庫。並行し、慶應義塾大学経済学部通信課程に通う。
北陸を拠点に置く金融機関の労働組合の会合で、福井信用金庫に勤務していた西川芙美子さんと知りあい、70年に結婚。71年、外志雄氏は信金を退社し、注文住宅販売会社・信金開発(株)(のちアパ(株))を創業。その後、マンションやホテル、レストラン事業などを中核とする14の企業から成るグループを形成した。この間、芙美子さんはグループの広告塔として活躍した。グループを統括するアパグループ(株)社長・一志氏(49)は長男、アパホテル(株)専務の拓氏(44)が次男。それぞれが外志雄氏と芙美子さんの後継者になる。
田母神俊雄航空幕僚長更迭事件
元谷外志雄氏が全国に名を轟かせたのは、田母神俊雄航空幕僚長更迭事件である。アパグループは2008年、第1回「真の近現代史観」懸賞論文を募集。航空幕僚長・田母神俊雄氏の「日本は侵略国家であったのか」が、最優秀藤誠志賞を受賞した(藤誠志は外志雄氏のペンネーム)。
同論文が政府見解と異なる主張であると問題視され、田母神氏は幕僚長を更迭された。当時、大騒ぎになった。グループ主催の「日本を語るワインの会」には政財界の大物や自衛隊の関係者が多数参加している。航空自衛隊小松基地金沢友の会会長でもある。
安倍晋三首相を支援する応援団「安晋会」副会長を務め、憲法改正の論陣を張る。安倍シンパの「ウルトラ保守」の論客として名を轟かせている。米トランプ大統領が誕生した際、外志雄氏は自ら編集長を務める『Apple Town』(17年2月号)誌で、「トランプ大統領誕生を機会に憲法改正へ」と題して、参議院議員片山さつき氏と対談。その時、こんなやり取りがあった。
〈片山 代表は日本の保守のオピニオンリーダーのお1人であり、安倍首相のビッグサポータとして知られていらっしゃいますから。
元谷 私は安倍首相と考えが近いというだけです。韓国で問題になっているように安倍首相に入れ知恵をしたわけではありません(笑)〉自著の南京大虐殺を否定する本をホテルの客室に置く
「安倍首相のビックサポーター」である外志雄氏は、その意見が国際的に大問題になったことがある。
アパホテルの客室に、〈南京事件も慰安婦強制連行はなかった〉と記述した「本当の日本歴史 理論近現代史学」の書を置いていることが爆弾になった。外志雄氏が藤誠志のペンネームで、月刊誌「Apple Town」に社外時評エッセイを連載したものをまとめたもので、英語訳も付いている。17年1月、海外からの宿泊客がこの本の存在に気づき、その内容をSNSに投稿したことから、当時、国際的な問題に発展した。「南京事件はなかった」という言辞は、「言論の自由」だとして、撤去しないと断言した。
さらに、海外からの宿泊客増加が予想される20年の東京五輪期間中にも本を撤去しないと表明。この問題をめぐっては中国と韓国の世論が強く反発した。しかし、そんな批判は、「どこ吹く風」だ。安倍首相の”お友だち”企業であるアパホテルは、飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続けてきたが、コロナ禍の一撃は、あまりにも強く、深い爪痕を残すことになるだろう。
(了)
【森村 和男】
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