ライオンズマンション春日公園~設計偽装に関する大京の回答(中)
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1.鉄骨柱脚ピンの場合の重要な係数の偽装
SRC造の内部鉄骨柱脚の形式は「埋め込み形柱脚」(下図右端)と「非埋め込み形柱脚」(下図中央)の2種類があります。
1階鉄骨柱脚が埋め込み形(下図右端)の場合は、柱脚部分に鉄骨の靱性(しなやかさ・粘り強さ)を十分に期待できるので、保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds)を鉄筋コンクリート造(RC造)の場合よりも「0.05」低減することができます。
これは、RC造が剛強な構造である反面、粘りに欠ける構造であるのに比べ、SRC造は内部の鉄骨が粘り強いことを考慮したものです。一方、豊洲市場(設計は日建設計)など1階鉄骨柱の柱脚が非埋め込み形柱脚となっているSRC造の建築物の場合は、建築基準法令および規準により、保有水平耐力計算における1階の構造特性係数(Ds)を鉄筋コンクリート造(RC造)の数値を採用しなければならないと定められています。つまり、RC造でDsが「0.35」であればSRC造では「0.30」とすることができるのです。要するに、設計が偽装されており、耐震強度不足となっているのです。
国土交通省建築指導課 監修「2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書 384頁には下記のように規定されています。
非埋め込み形柱脚(柱脚ピン)は 鉄骨柱が埋め込まれていない形式なので 「柱脚部に鉄骨が存在しない鉄筋コンクリート」としてのDsを採用すべき(鉄骨鉄筋コンクリート造の低減はできない)ということです。
2.耐震壁方向に有効な鉄骨部材が配置されていない場合の重要な係数の偽装
SRC造の鉄骨柱において、耐震壁方向(張間方向)に有効な鉄骨部材が配置されていない(H型鋼単材)場合、張間方向の保有水平耐力計算においては、RC造のDsにより計算を行わなければなりません。これは、有効な鉄骨部材が存在しないフレームにおいては 鉄骨特有の靭性(粘り強さ)を考慮できないからであり、建築構造に関する文献にも明記されています。
適法に構造計算を行えば張間方向については RC造のDsを採用しなければなりません。しかし、この規定を守らずに、SRC造の低減されたDsを採用したことは構造計算の偽装です。この規定は 工学的にも法的にも当然のことでありながら、多くの構造設計者や 建築確認の審査を行った行政庁も 認識が足りなかったため、このような偽装が数多く存在することとなったのです。しかし、設計者や行政に認識がなかったことは、マンションの区分所有者などのユーザーには関係ありません。
大阪では、この規定を考慮した検討を行っている分譲マンションの例があります。3.鉄骨柱脚ピンの場合の必要鉄量の不足
「建築物の構造規定」(日本建築センター刊、建設省監修)によれば、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚である場合、柱脚の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)が、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋の断面積の合計)と等量以上にしなければならないと定められています。この規定は、柱が引張を受けた場合に、ベースプレートが上部のコンクリートを持ち上げ 変形がアンカー部に集中し、ベースプレート下に大きなひび割れが入り、その部分のアンカーボルトと鉄筋が集中的に伸びることを防止する目的の規定です。
この規定を、豊洲市場水産仲卸売場棟の柱符号C601の1階の柱頭と柱脚に当てはめた場合、以下のようになります。
(つづく)
【桑野 健介】
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