この世界、どうなる?(2)花も咲き、ウィルスも咲く春の暮れ
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広嗣 まさし(作家)
今年は花見もままならなかった。仕方なく、家の近くの小さな公園で、咲いた桜をめでながら、川柳の一句をひねってみた。こんなことを前からしているわけではない。東京の友人が川柳に凝っているものだから、それを真似てみただけである。
それにしてもこの新型コロナウィルス、私に言わせれば「一帯一路ウィルス」である。「一帯一路」は中国の世界戦略。これによって一気呵成にアメリカに対抗しようとしたのも束の間、思惑とは大きくズレ、経済の道であったはずのものが、ウィルス感染の一大経路となってしまった。お粗末以外の、なにものでもない。
このように、習近平の中国共産党政府は、単純に言ってドジなのである。深謀遠慮をはたらかせて世界制覇を試みるなど、どう転んでも実現できそうにない。陰謀をめぐらせるほどの知能は彼らのどこにも見当たらないからだ。しかるに、目利きのトランプでも、そこまでは見通せなかったようだ。というのは、中国政府を買いかぶっていたのである。ポンペオ国務長官が陰謀説に傾いたのも、同様の理由だ。
中国政府がほんとうに陰謀をめぐらせていたのならば、もっと巧みに立ち回っていたはずだ。私に言わせれば、今回のウィルス騒ぎに対する中国政府の振る舞い方は、あまりに芸がない。情報コントロール過多症の現れであり、自ら思考停止に陥った結果である。そのようにしか思えないのである。国民を思考停止にさせようとして、政府自らも思考停止に陥る。その典型例である。
そもそも武漢のウィルス研究所で起こったことは、中国では日常茶飯事の杜撰さが原因ではなかったか。その杜撰さを隠そうとして、責任をたらい回しにし、地方政府が公表するにも中央政府のお墨付きが必要であると中央政府の決断を待ってようやく公表に至ったということではないか。そのような見方は「中国に優しすぎる」というなかれ。内部事情がどうあろうと、外部に与えた被害の責任はとってもらわねばならない、と私も思う。
仮に陰謀説が真実であるとしたら、説明のつかないことが多すぎる。「中国はコロナを制圧しました。どうか皆さん、私たちのプレゼントを受け取り、コロナと戦ってください」と、気前よさそうに海外に医師団を送ったり、マスクなどを提供したりした挙句、「中国に感謝を」などと馬鹿なセリフを並べるだろうか。おまけに、マスクなどの大半は不良品。こんな間抜けなことはない。
ある人の意見が興味深い。「中国がバカなことをしたおかげで、少なくとも韓国と日本は株が上がった。台湾の株はより上がった」と。台湾については別に書きたいのでここでは多くは書かないが、「台湾はすごい」ということだけは書いておく。
中国政府がそこまで低能なのは、政権の維持だけを考え、自国内のことにしか注意がいっていないことにある。海外の情報を遮断すればそうなるのも無理はない、とはいうものの、少なくとも政府上層部には、世界に通じた知的人種がいるはずである。しかし、そうした御仁が何を言おうと、それを受け止めて熟慮できるほどの知的ゆとりが、おそらく今の政府にはない。極めて大きな弱点である。
強力な政権を下から支えるはずの、経済的に恵まれ、知的にも成熟した中間層というものも、今の中国には存在しない。情報のコントロールを過度に行ったがゆえの結果であり、政府がもう少し彼らを信頼していれば、彼らも政府をもう少し信頼するようになっていただろう。そのような相互信頼が欠如しているのが現在の中国である。これでは国として、到底もたないのではないか。
中国政府のお粗末、杜撰さと関連する話として、昨年末に北京から帰ってきたある日本人科学者がこのようなことを言っていた。「清華大学にはとんでもない秀才がいますけど、それでもインドに比べれば足元にもおよびません。発想が貧弱なだけでなく、計算能力も劣る。経済大国といっても、あの程度の知的水準なら日本ははるかに上をいっています。それなのに、彼らはどこでどうつけたのか知らないけれど、妙な自信をもっている。あの自信だけは、いただけませんね。中国とは、十何億匹のカエルが住んでいる、巨大な井戸なのですかねえ」。
そうであるとすると、日本の新聞記者のなかにナイーブな人がいて、彼らが「中国の科学研究の論文の被引用数は多く、その数は日本の比ではない」などと言っているのはいただけない話である。科学分野で中国の方が上だ、という意味の記事であるだが、論文の中身を調べず、数量だけを見てそんなことをいうとはジャーナリストの風上にも置けない。いい加減、そのレベルから脱却してもらいたい。
中国政府の知能のなさは、その悪しき教育システムにも反映されている。意味不明の文言を丸暗記させるその方式は、権力者を脅かさない人材を育てるだけで、一向に知性を育てない。このようなことで、やっていけるのか。他人事ながら心配になるが、実は他人事ではない。今の世の中、近隣諸国の動向は、そのまま我が国に影響するのである。
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