電九協と福電協が27年に統合へ 組合活動の充実と業界の繁栄図る

協力を誓い合う両理事長(左:福岡電気工事業協同組合 理事長  堀内重夫氏 右:電九協福岡電設㈿ 理事長  野添光治氏)
協力を誓い合う両理事長
(左:福岡電気工事業協同組合 理事長  堀内重夫氏
右:電九協福岡電設㈿ 理事長  野添光治氏)

 福岡都市圏(一部長崎を含む)を中心に12の支部を構え、電気工事事業者の繁栄を後押ししている福岡電気工事業(協)(福電協)。同組合と、同じく電気設備業務に携わる福岡の中小企業や従事者を支援している電九協福岡電設(協)(電九協)とが、2027年に統合することが決定した。

県下2団体が統合へ

 前身となる福岡電気工事組合が1942年に創立されて以来、福岡県の電気工事業界を支えてきた福岡電気工事業(協)(以下、福電協)。同組合において、これまでにない大きな動きとして注目されているのが、電九協福岡電設(協)(以下、電九協)との統合だ。

 今年5月、電九協は2年後の2027年に福電協と統合することを決議した。統合により、福電協は移籍を希望する電九協の組合員を受け入れる。これについて福電協の理事長・堀内重夫氏は、「統合は歴史的経緯もあり、簡単ではありません。それでも環境が変化するなかで業界の将来のためには避けて通れないと判断し、電九協への働きかけを強めていきました」と振り返る。

 福電協の組合員数は365社(5月末時点)。これに電九協の113社(同)が加われば、その数は478社となる。堀内氏がかねてより目標としていた、組合員数500社の大台に一気に近づくのだ。組織の規模が拡大すれば、活動も今まで以上に充実する。各組合員にとっては、組合に属することのメリットがより鮮明になっていくはずだ。現在、福電協には12の支部があるが、統合後は7支部へと再編の予定。業務を集約化してコストを削減するとともに、意思決定を迅速化することで、アクティブな組合運営を図るという。

 事業者の高齢化や人手不足、環境問題、資材高騰、電力自由化など、多くの課題を抱えている電気工事業界。仕事はあるのに、人手不足で受注できないというケースもある。また、後継者の不在によって廃業を余儀なくされる組合員も後を絶たないという。「逆風に対して知恵を絞ることで、いかに追い風へと変えていくか。理事長である私に大きな期待が寄せられていることを、ひしひしと感じる毎日です」(堀内理事長)。
 堀内氏は、電気設備工事や太陽光発電を主に手がける(株)堀内電気の社長を務めており、M&Aの経験も有することから、その経験を生かして会計事務所と共同で相談会を開催するなど、自ら組合員の支援も手がけてきた。

電気工事の魅力発信

 人手不足解消などで期待されているのが女性の活躍だ。全国各地の電気工事組合でも徐々に女性部を設立するところが増え、女性同士の交流や技術の向上、働き方改革の支援などが図られているという。

 福電協では23年に女性部会を設置。「女性だからできること」をテーマに、彼女たちの取り組みを電気工事業界だけでなく、建設業界全体に向けて発信している。福岡支部には7名の女性スタッフが在籍しているが、最近の面白い取り組みとして、彼女たちが組合員の職場を訪問取材し、そこで得た情報をメルマガで発信。記事を通して組合員の交流が生まれることから、話題になっているそうだ。

 次世代を担う若者の採用も大きな課題だ。福電協では組合員の協力の下、10年以上続けているのが福岡市東区の香椎工業高校での出前授業だ。ここでは電気科に在籍する生徒を対象に、業界の魅力を訴求。「大型バケット車乗車体験と防犯灯点検作業」「電柱建設作業見学とバケット車乗車体験」「屋内配線作業体験」などを通して実務を身近に感じてもらい、仕事のやりがいを味わってもらおうという試みだ。

 また、福岡市とWeLove天神協議会が開催する小学生向けの「夏休みワーク体験会」のほか、大手電設資材商社・カンサイが主催するカンサイフェアでは、子ども向けの電気工事体験授業を実施している。

 「たとえるならば、電気工事特化型のキッザニアです。地味な活動ですが、これをきっかけとして、『将来は電気屋さんになりたい』という若者が現れたら嬉しいですね」(堀内理事長)。なお堀内理事長自身も、電気工事に携わる父親の姿に憧れて、この業界に飛び込んだと話してくれた。

福電協の取り組み

各種資格取得に向けた指導・教育機会の提供に注力
 福電協では、指導・教育、電気工事業に関する情報や資料の提供のほか、電気工事業に関する調査研究、電気工作物の保守管理業務の共同受託などを手がけている。たとえば九州電力送配電(株)からの委託を受けて、顧客宅を訪問して電気設備の安全調査を行う「福岡県電気安全サービス」もそれに含まれる。
 近年は大手電気施工事業者による無資格者施工問題などで、業界に対するチェックの目が厳しくなっていることから、資格取得に向けた指導・教育機会の提供にも注力している。高度な技術が求められる電気工事において、国家資格の有無は作業の品質を保証する必須条件だ。組合を挙げて資格取得を全面的に支援しているという。具体的には、第一種電気工事士と第二種電気工事士試験に向けた学科・実技講習がある。高さ5mを超える場所での作業に関しては、2019年に建設業法が改正されてフルハーネスの着用が義務付けられたが、このときは「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」の講座を開催するなど、現場のニーズに速やかに応えてきた。

 堀内氏は、福電協の上部組織・福岡県電気工事業工業組合の副理事長を兼務していることもあり、同組合や(一社)全九州電気工事業協会(全九電協)、全日本電気工事業工業組合連合会(全日電工連)といった上部組織との連携も活発に進めている。

 たとえば、技術者の資質および能力向上や、電気工事業界全体の意識向上を図ることを目的にした「電気工事技能競技全国大会」が挙げられる。同大会は全日電工連が主催し、経済産業省・国土交通省・文部科学省などが後援するイベントで、全国約3万社から各都道府県代表とブロック推薦枠の最大58名が競う「一般の部」のほか、「女性の部」「高校生の部」の計3つの部門に分かれ、2日間の日程で技能競技の日本一を競うというものだ。

 業界団体に加盟することで、こういった上部団体との連携により、業界としての課題解決に集団で取り組むことが可能となり、それが法改正などにつながって状況打破の糸口となることもある。また、組合員に向けて有意義な情報を積極的に発信していくことが、会員相互の関係性を深め、新しい人材の活躍の場を創造していくことにもつながるという。

 「多くの信頼できる方々との出会いがあったからこそ、現在の私があります。今度はその恩を、電気工事業界にお返ししていきたい。事業承継の受け皿づくりや、若年事業者の組合加入の促進、そして慢性的人手不足解消への取り組みは、組合に課せられた大きな課題であると同時に、私自身に与えられた使命です。積極的な投資やチャレンジをして組合員を増やし、その結果として組合組織が強靭になっていくと考えています。今回の電九協との統合は大きな契機となりますが、業界のさらなる発展と、移籍してこられる方も含めた組合員各々の事業の繁栄のために、組合が一丸となって取り組んでいきたいと思います」(堀内理事長)。

【天野祐次】

電九協福岡電設(協) 理事長  野添光治氏

電九協福岡電設(協) 理事長  野添光治氏    当組合員の皆さまにとって最善の道を探し続けた末の決断ですが、半世紀にわたる紆余曲折を経て、電九協は福電協と統合することを決したことに、理事長として重い責任を感じております。今後は転籍される当組合員がこれまでと同様、あるいはそれ以上の恩恵を享受できるよう、福電協と丁寧に協議を重ねていきます。また、電九協が培ってきた事業や支援体制を福電協に確実に引き継ぎ、皆さまの利益に資するよう努めてまいります。

<プロフィール>
福岡電気工事業(協)
理事長 堀内重夫
(ほりうち・しげお)
1958年12月生まれ、福岡県大野城市出身。筑紫工業高等学校(現・筑紫台高等学校)を卒業後、地元の電気工事会社を経て1986年に堀内電気工事店を創業。97年に(株)堀内電気を設立し代表取締役に就任した。2017年に福岡電気工事業(協)の副理事長、2021年に同理事長に就任。福岡県電気工事業工業組合の副理事長も務める。趣味は釣りとゴルフ。

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