【凡学一生のやさしい法律学】関電責任取締役提訴事件(4)
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「関電疑獄事件」の本質、すなわち支配的な優越者が隠蔽しなければならなかった真実とは、原子力発電事業が当初から疑獄まみれであったことや、この事業に際限なく「公金」が投入されたことである。日本の10大電力会社に通有の事情ではなかったのか、と疑念を生じさせた事件であった。
福島原発事故が起こったことにより、原子力発電事業の災害は人知の想像を超えた莫大かつ深刻なもので、一私企業の形態をとる東京電力(株)では到底対応できない巨大な災害事故であることが実際に証明された。そして、電力事業が一私企業として株式会社の形態をとっていることが、完全に利権構造のためだけであると国民にも理解された。
利権の象徴である収賄の事実をきびしく隠蔽しなければ、10大電力事業会社の存続そのものが重大な政治課題となることは必至である。日本のマスコミで、「なぜ関電が素直に収賄事実を認め、早急に適切な善後策に着手できないのか」という本当の理由に言及した論説は存在しない。これは、単に記者の力量不足だけの問題ではない。
ここに、事件のもう1つの謎を解くカギがある。「ゴーン事件」である。同じ株式会社取締役の不正・犯罪行為だが、ゴーンは逮捕され刑事責任を追及された。一方、はるかに巨額で、多数の職員がかかわる永年の収賄事件だが、1人の逮捕者も出てない「関電疑獄事件」との落差は、極めて理解しがたい不条理である。
これを解く「補助線」は、「ヤメ検」である。関西電力(株)には長年にわたり、「ヤメ検」の「天下り指定席」が複数存在した。一方、大企業である日産自動車(株)には、「ヤメ検」の指定席は存在しなかった。日産の反ゴーンの先鋒であった通産官僚出身の取締役が「相談」したのが「ヤメ検」だった。「ヤメ検」が主導して、日本では十分には理解されていない「共犯者裏切り型司法取引」というもっとも反倫理性の高く、これまた立法によって成立した捜査手法が使われた。
筆者は、「関電疑獄事件」と「ゴーン事件」の刑事責任追及の有無の落差は、「ヤメ検」の既得利権と新規利権開拓の差と読む。「関電疑獄事件」にはいろいろと隠蔽しなければならない事情が存在することを、国民は知るべきである。「関電疑獄事件」は長年にわたる贈収賄事件であるから、1人の収賄者の脱税額だけでなく、収賄者全員の脱税額も巨額となる。さすがの財務省にとっても、このような組織的な巨額脱税事件を見てみぬふりをするには限度を超えていた、という事情もある。
しかも賄賂の原資はすべて国民の電気料金であるから、発覚した場合には、当然、大問題になることも予想された。それにもかかわらず、贈収賄の全貌には、5名だけの民事責任で終止符を打とうとする優越的支配者の意図が見え見えである。このような大胆な隠蔽工作を平然と実行できるのは法匪(ほうひ)以外にはいない。
(了)
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