元わらび座・山川氏、地域社会における舞台芸術の可能性を広げる

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 長年にわたり日本の舞台芸術を牽引してきた劇団わらび座で代表を務めた山川龍巳氏。現在も演劇を通じた社会課題の解決、高齢者劇団の設立や企業研修への応用など、舞台芸術の可能性を広げる試みを模索する。山川氏はわらび座で50年を過ごした半生を振り返る書籍を執筆中という。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役会長 児玉直)

山川龍巳氏
山川龍巳氏

    ──現在、どのようなことに取り組まれていますか。

 山川龍巳氏(以下、山川) 舞台芸術について、社会の課題解決に役立つ力をもつということを、より多くの人に理解してもらい、地域の活性化に貢献していきたいと考えています。舞台芸術は単なる娯楽ではなく、社会的に果たす役割が非常に大きいと実感しています。

 わらび座自身、地域文化の発掘と発信により、地域との結びつきを強めてきたと思っています。地域にある素材を使って新しくクリエーティブな文化として創造し、子どもたちの地域や歴史といったルーツへの意識を育むことが重要だと考えています。また、舞台芸術は人々の孤独や高齢化、いじめといった社会課題を解決し、健康増進や生きがいにつながる可能性をもっていると思っています。若い経営者の発案により、秋田大学医学部との連携のもと、高齢者劇団が立ち上がっています。

 企業の社員教育においても、舞台芸術ならではの視点が生かせると考えています。一般的に劇団では主役に焦点を当てがちですが、実は脇役が成長すると主演の役者もその分輝くようになるのです。このような劇団の稽古におけるコミュニケーション教育の考えについて、いくつかの企業の担当者に話したところ、共感して社員研修に採用していただいており、広がりを見せています。すべての役者が、この仕事を担えるようになってきています。

 アートマネージメントを通じて、社会との接点をもち、収益につなげる道も探っています。文化芸術団体は従来、自己実現や芸術活動そのものに重点を置く傾向が見られましたが、今後は、社会とのつながりを意識し、その価値を具体化し、経済的な基盤を確立するという、アートマネージメントの知識と能力をもった人材を育成するとともに、さまざまな分野との連携を強化していくことの必要性を強く感じています。

 また、わらび座を創設した原太郎をはじめ、これまで劇団の発展に尽力してこられた多くの方々の思いや哲学をしっかりと記録し、後世に伝えていきたいと思っています。わらび座はコロナ禍という未曽有の危機に見舞われましたが、地域の皆さまからの温かいご支援や、ふるさと納税、企業版ふるさと納税といった制度を活用して再生でき、活動を続けることができています。わらび座の再生に尽力してくれた人々への感謝の思いを記録し、書き残しておきたいと思っています。

 ──わらび座の後輩たちにどのようなメッセージを伝えたいですか。

 山川 自分たちの足元にある地域の文化や歴史を大切にし、それを新しいかたちで創造していくことの重要性を伝えたいと考えています。そして、これからの時代は、アートマネージメントを確立することが重要であり、芸術・文化と生活や社会とを結びつけるスタッフを養成することこそが、日本の文化が社会により深く定着するうえで欠かせないと思っています。良い舞台を創ることはもちろんのことですが、アートマネージメントの視点をもち、文化芸術が社会のなかでどのような役割を果たせるのか、その可能性を追求してほしいと思っています。プロスポーツがスポンサーを集めるように、資金調達の道を切り開いてくれたらと望んでいます。

 かつて、あきた芸術村という構想が生まれたほど、わらび座は秋田県の、そして日本の大切な文化遺産です。わらび座がその灯を絶やすことなく、未来へとつなげていくことを望んでいます。幸い、わらび座にはキラキラと輝く若い人材が大勢います。そのような才能を生かしきれるようなチームづくりや活動の展開を期待しています。私もこのことを真剣に考えていきたいと思っています。

【文・構成:茅野雅弘】

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