アビスパ福岡 ホーム最終戦を歓喜で締める 88番・松岡が突き刺した今季初弾
アビスパ福岡がホーム最終戦でG大阪に1―0で勝利し、5試合連続無失点を達成した。30周年イヤーのベスト電器スタジアムが、この日いつも以上に深いネイビーに染まっていた。決勝点は後半10分、背番号88・松岡大起の今季リーグ戦初ゴール。満員近くの観客で埋めつくされたスタジアムは大きな歓声に包まれた。
ベススタが揺れた最終戦。1万7,587人が見届けたネイビーの意地
ホーム最終戦。晴れた空の下、1万7,587人のサポーターがつくり出す熱量は、キックオフ前からスタジアム全体を震わせていた。
相手はガンバ大阪。シーズン終盤まで激しい戦いを続けてきた両者だが、この日の主導権を握ったのはアビスパ福岡だった。金明輝監督を迎え新体制で挑んだ今シーズンの福岡だが、積み上げてきた攻守のバランス、その完成度がはっきりと表れた90分間となった。
金監督は試合後、「立ち上がりは少しヒヤッとしましたが、得点するまで、そして60分過ぎくらいまでは思い通りにプレーできた」と振り返った。試合の入りから終盤までの手応えを、率直に示したコメントだった。
立ち上がりの危機をしのぎ、福岡が流れを引き寄せる
試合開始直後、G大阪に裏へ抜け出されネットを揺らされたが、直前のオフサイドで取り消しとなった。危険な場面ではあったが、このシーンを境に福岡は集中を高めた。奈良、安藤、前嶋の3バックが間合いを調整し、松岡と見木が中央でボールを落ち着かせる。守備の重心が整うと、プレッシャーをかけることで相手の前進を阻み、次第に試合は福岡のペースになっていった。
橋本が右サイドを制圧。前半は福岡が攻勢に
攻撃の軸になったのは右サイドの橋本だ。縦に強く抜けるドリブル、重見との連動で相手SBの背後を突き続けた。名古の動き直しも加わり、福岡は右から安定してチャンスをつくった。前嶋が左サイドで冷静にゲームメイクし、中盤では見木のスイッチから松岡が前向きに配球。セカンドボールへの反応もよく、試合の主導権は完全に福岡へ傾いた。
GK小畑も前半の数度のシュートを的確に処理。1万7,000人を超えるサポーターの声に後押しされるようにゴールを守り切った。試合後、小畑は「スタジアムの雰囲気が守備にも攻撃にも見えない力として働いた」と語り、ベススタの後押しを強調した。
後半、福岡がさらに圧を強める
後半に入り、福岡は前線の連動をさらに強めた。名古、重見が積極的に裏を狙い、橋本と藤本がサイドの幅を取りながら相手守備陣を動かす。中盤からの押し上げがスムーズになり、G大阪は中盤で後手に回り始めた。金監督も「守ってカウンターだけではなく、積極的に奪いに行く守備ができていた」と語ったように、攻撃への姿勢は終始明確だった。
松岡大起、今季初得点。ベススタが爆発した一撃
後半10分、試合を決める瞬間が訪れた。中央でボールを受けた松岡が、相手の寄せを外し前を向く。前方に空いたスペースへそのまま運ぶと、右足で思い切り良くミドルを放った。鋭い弾道がゴール右隅へ吸い込まれた瞬間、ベススタは揺れ、スタンドから大歓声が巻き起こった。
これが松岡大起の今季リーグ戦初ゴール。福岡にとって、そして本人にとっても待望の先制点だった。松岡は「前半に1本外していたので、次は思い切りチャレンジしようと決めていた。それがゴールにつながった」と語り、決断の裏にあった意識を明かした。
普段は冷静に試合へ入る88番が、この瞬間ばかりは感情を抑えきれなかった。拳を上げ、仲間と抱き合い、スタンドへ向けて叫んだ。その姿にベススタの歓声はさらに膨らんだ。
終盤のG大阪の押し込みにも揺るがぬ堅守
失点後のG大阪は、サイド攻撃とセットプレーで圧力をかけた。クロスや折り返しの場面が増え、福岡は押し込まれる時間帯となる。しかし、最終ラインは集中を切らさなかった。奈良は空中戦で競り勝ち、安藤が裏への抜け出しを封じ、前嶋が継続的にカバーリング。小畑は鋭い反応で狙い澄ましたシュートを弾き返した。
福岡はこれで「5試合連続無失点」。金監督は「最後は守勢になるのは当然。ただドン引きして守るクリーンシートではなく、積極的に奪ってショートカウンターにつなげる守備ができていた」と手応えを語った。守備の連動、球際の強さ、そしてGKを含めた組織的な対応。福岡が磨いてきた堅守が数字にも現れた。
松岡大起、拡声器を手に

試合後、ゴール裏に歩み寄った松岡が拡声器を手にした。
「バモース!!」
いつもは冷静な松岡が感情を爆発させた。ゴールの余韻、勝利の安堵、サポーターへの感謝。それらが一気に溢れ出たような声だった。そして、初めての博多手一本の音頭。サポーターの前でアビスパ福岡のホーム最終戦に相応しい締めくくりとなった。
ホーム最終戦を戦い抜いたアビスパ福岡。勝利で積み上げたたしかな手応えを胸に、チームは次節、リーグ最終節となるアウェー名古屋へ向かう。

【森田みき】








