福岡で保守派の論客として活動する井上政典氏が代表を務める九州・歴史・観光戦略研究所が今月22日に予定していたスパイ防止法制定に関する講演会を中止したことがわかった。講師は自民党元衆議院議員・長尾敬氏が務めることになっていた。
長尾氏が10日に自身のFacebookにおいて、「諸般の事情で中止となりました。申し訳ございません」と、2月27日の講演会開催の記事をシェアしたうえで講演会中止を告知した。長尾氏に中止の理由について質問を送ったが、19日時点で回答が得られなかった。
主催の九州・歴史・観光戦略研究所代表の井上政典氏はデータ・マックスの取材に対し「講師の都合で中止した」と述べたうえで、後援団体の「アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム」が旧統一教会の関連団体とされることに関して「代表は、元航空自衛隊の空将で信者でも何でもない」「統一教会だからと責めること自体が大きな大間違い」などと語った。
また、東京高裁が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対して宗教法人法に基づく解散命令を出したことについて、信教の自由があるとの認識を示したうえで「国家による宗教弾圧でありそんなのを許していいのか」「福田ますみさんなど少数のジャーナリストしか声を上げない」と批判した。
今回の講演会に関して全国メディアによる報道の動きがあったとされ、自民党の方針との整合性などを考慮したのではとの見方もある。
高市早苗首相は2月20日の施政方針演説で、政府のインテリジェンス機能強化を掲げ、今国会において国家情報局を設置する法案を成立させ、「スパイ防止法」に関する有識者会議を設置する方針を打ち出した。中国や北朝鮮、ロシアなどの情報機関によるスパイ活動が野放しになっており、経済安全保障の面からも法制化が必要との指摘がある。
スパイ防止法に関して自民党をはじめ保守派が賛成する一方、日弁連やリベラル左派系の野党などから言論の自由などへの影響を懸念する反対論もある。
講演会の後援団体であった「アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム」は、2011年に設立された。福岡県にも支部があり、県支部の結成大会には自民党県議なども参加していた。
同団体のホームページによると、全国フォーラムが主催する全国各地の講演会やセミナーで旧統一教会関係者が講演していることが確認された。運動方針として日韓米の防衛協力の強化やスパイ防止法制定、憲法に緊急事態条項を設けることなどを掲げている。
旧統一教会問題に詳しいジャーナリスト・鈴木エイト氏は「アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラムや国際勝共連合といった統一教会系の団体は、スパイ防止法の制定を自分たちの成果としたいのでしょう。一方の制定を進める側には、こういった団体との関係性について説明責任が求められます」と語った。
旧統一教会の活動に対する警戒がある一方で、政治活動や思想・表現の自由ともかかわる問題でもあり、今回の講演会中止は波紋を呼ぶことが予想される。
【近藤将勝】








