【凡学一生のやさしい法律学】自民党総裁選の意味するもの(1)~世襲議員の大乱舞、国民が選んだ総理大臣という詭弁(前)
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(1)民主主義の重篤な病理現象
世襲議員の集団による権力のたらい回しは、民主主義の原理に反する。政治権力が一部の特殊な属性の国民によってたらい回しされている国家現象の典型例は、アラビア半島の石油資源で経済大国となっているサウジアラビアである。
サウジアラビアの一般国民には、民主主義の原理としての国民主権は存在しないが、さりとて一般国民が権力による圧政に苦しんでいるという情報もない。潤沢な国家予算により、国民は経済的に満足した国民生活(消費生活)を送っているからである。
日本には王族や貴族という出自によって政治権力を保有する集団は存在しないが、国会議員の地位を相続財産化した「世襲議員」、つまり出自によって就任している議員が多数存在する。
この世襲議員とそれに投票した主権者である国民(支援者)との間には、国政に関する自由な判断による主権者とその代理人という関係はまったく存在しない。主権者である国民が世襲議員の実際の政治活動を知らないから起こっていることであり、これは実質的に民主主義の原理の完全な否定である。
日本の青少年は高校生になるころまでに、「政治家となって社会正義を実現する夢」を持つ者はほぼ皆無となる。高校生にさえ、「政治家というのは、社会正義を実現する崇高な職業ではない」と理解されている。
ただ、1つだけ面白い現象が日本の学歴社会には存在する。高級官僚の登竜門とされる東大法学部の合格発表がマスコミに取り上げられる際によく見られる現象であるが、合格者のなかには必ず、「中央官庁に就職して日本の政治で活躍したい」という者がみられる。
これはおそらく、東大法学部には一部の超有名校の「学閥」が存在することを知った者の発言と思われる。高級官僚の世界がすでに特殊な超有名校の学閥社会であることを知るものは国民のごく一部である。この高級官僚の世界も、日本の国会議員の供給源であることを、この際に確認しておきたい。
以上に見たように、すでに、民主主義の原理の基本である「主権者」が権力執行の「代理人」を選定選任するプロセスが事実上、存在しないことを実証するのが、世襲議員の集団による総理大臣の選任手続、つまり、自民党の総裁選である。
(つづく)
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