2024年12月22日( 日 )

アメリカ大統領選挙後の世界秩序を模索する!(5)

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 「国際アジア共同体学会(ISAC)年次大会」が11月7日(土)、「ポスト・コロナを生きる日本の道」をメインテーマとして、東京・日比谷の現地会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
同大会の後援者は、朝日新聞東京本社、(公社)日本中国友好協会、共催者は(一社)アジア連合大学院機構、日本ビジネスインテリジェンス協会、日本華人教授会議。

第4部「アメリカ大統領選挙後の米中新冷戦と米日関係」

 下記の3名の報告が行われた。

(1)萩原伸次郎氏(横浜国立大学名誉教授)
 テーマ:「米国大統領選の分析と展望」

(2)太田昌克氏(共同通信編集委員)
 テーマ:「米中関係の新展開と対日アジア政策の在り方」

(3)平川均(浙江越秀外国語大学招聘教授)
 テーマ:「コロナパンデミック下の中国と世界経済の行方」

 ここでは、米国大統領選について言及した萩原氏、太田氏の講演のエッセンスをお届けする。萩原氏は「米国大統領選の分析と展望」と題して、次のように語った(報告時点では同選挙結果は完全に判明していなかった)。

新型コロナウイルスへの対応を誤った

 現在開票中ですが、バイデン候補が勝利すると考えております。(バイデン候補の勝利宣言は、当日の閉会前後に行われた)では、なぜバイデン候補がなぜ勝てたのか、それはトランプ候補が「新型コロナウイルスの対応を誤った」のという一言に尽きます。

 新型コロナウイルス出現前のアメリカは、2017年12月に成立した「減税・雇用法」()によって、18~19年の企業の設備投資が盛んになり、多国籍企業がお金をアメリカに戻し、その影響で株価が上がり、企業も儲かり、トリクルダウンで労働者の賃金も上がりました。株価は史上最高、失業率は史上最低だったのです。これ以上の再選の条件はありません。トランプ候補は「この経済を続ければ絶対に勝てる」と考えていました。

 しかし、そこにコロナ騒動が起きました。トランプ候補は1月初めには、中国の習近平国家主席から、「大変深刻な病が武漢で発生しました」という連絡を受けていましたが、それをまったく無視し、おまけに騒動が起こると「チャイナウイルス」と呼びました(バイデン候補は「トランプウイルス」と呼んでいた)。

 トランプ候補はコロナ対策を誤り、非常事態宣言が3月13日に出され、この感染症は拡大の一途をたどっています。トランプ候補が対策を誤った大きな原因は、アメリカ合衆国の政権6代にわたって大統領に感染症関係の助言を行ってきたアンソニー・ファウチ氏 (国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長)など科学者の意見をまったく聞かなかったことです。

 トランプ候補は、「コロナに私は罹らない、コロナは無害だ」と言い続けました(結局、かかってしまいましたが)。本人はもちろん、サポーターも選挙中にマスクもしませんし、ソーシャルディスタンスもとっていませんでした。

元来民主党の牙城であったラストベルトの3州は奪還

 コロナ関連以外で、バイデン候補の勝利の原因を見てみましょう。まずはラストベルトと呼ばれるウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルバニア州は元来、民主党の牙城でした。前回の選挙でトランプ候補にひっくり返されましたが、今回はバイデン候補がすべての州で勝利しました。その要因は、トランプ大統領の就任で4年が経って株価は上がりましたが、職は戻ってきていないという住民の思いでした。バイデン候補は、選挙公約で「私が大統領になったら、時給最低15ドルを保証する」と約束しました。

 次に注目したのは、アリゾナ州です。前回の大統領選で民主党のヒラリー候補はアリゾナ州では負けましたが、今回はバイデン候補がアリゾナ州で勝利しました。もう1つ象徴的だったのは、ジョージア州です。南部であるため保守的な地域で、知事も共和党でしたが、バイデン候補が勝利しました。

(つづく)

【金木 亮憲】

※:いわゆるトランプ減税と言われ、その画期性は法人税率の大幅引き下げと国際課税改革にある。 ^

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