【地場ゼネコン特集】好決算続くも建設投資減少見込み コロナ禍への対応は(前)
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建設不況を経て生き残った地場企業の体質はもともと強固だ。福岡地区上位各社は好決算を叩き出し、有利子負債削減や内部留保に余念がない。「天神ビッグバン」を含め多くの再開発計画もある。こうしたなかで発生した、新型コロナウイルスの影響に今後いかに対応していくか、各企業の施策が問われる。
民間建設投資が減少に
国土交通省が公表した2020年度の建設投資見通しは、前年度比3.4%減の63兆1,600億円。このうち、政府投資は25兆6,200億円(前年度比3.1%増)、民間投資が37兆5,400億円(前年度比7.3%減)となっている。これを建築・土木別に見ると、建築投資が38兆1,500億円(前年度比6.5%減)、土木投資が25兆100億円(前年度比1.7%増)となる。建築投資額の67.1%を占める民間投資が大きく減少しているのが特徴。
2020年度の建設投資は、19年度の補正予算などに係る政府建設投資が見込まれるとしながらも投資額は減少となる見通し。
過去の建設投資を振り返ると1992年度の約84兆円をピークに年々減少をたどり、2010年度の建設投資金額は1992年度の約半分となる約42兆円まで落ち込んだ。その後、2011年3月に発生した東日本大震災の復興を境に徐々に回復傾向となっている。
投資見通しの構成では、政府投資が25兆6,200億円で全体の41%の割合に対し、民間投資が37兆5,400億円で59%を占める。
伸び率をみると17年度の全体の伸び率は4.4%、18年度は3.4%、19年度は3.1%と減少傾向にあり、20年度はマイナスとなっている。なかでも大きく伸び率を落としているのが民間住宅建築でマイナス8.1%、民間非住宅マイナス9.5%で、全体の投資額を引き下げている。また、土木工事の公共工事の伸び率も鈍化している。18年度、19年度には10%を超える伸び率だが、20年度は3.1%となっている。
建築投資に注力
地域別でみると関東地域の建設投資額は22兆7,100億円と全体の36%のシェアをもち、国内における市場規模の大きさを物語っている。また、中部、近畿、九州など4大都市を有する都市圏では建築投資の比率が高く、北海道、東北、北陸などの地方では土木投資の比率が高くなっている。
なお、九州地方における建築投資は3兆4,400億円、土木投資は2兆5,500億円で合計5兆9,900億円の見通し。2000年度の九州地方の実績は、建築投資が2兆8,909億円、土木投資が4兆768億円の合計6兆9,678億円で過去20年間では最大となった。
その後、02年度には5兆円台となり、04年度には4兆円台、リーマン・ショック以降、11年度は3兆円台まで減少している。その後は14年度を除き右肩上がりで17年度の実績は5兆7,248億円まで戻った。また、11年度以降は構成比が逆転し、建築工事により投資されるようになった。
コロナ禍を機に進む二極化
新型コロナウイルス終息の見通しが立たないなか、経済界への影響が生じてきた。福岡県下の地場ゼネコンおよびデベロッパー上位92社でみると、好決算を叩き出した企業は少なくない。しかし、一方では受注予定だった新築・改修工事の計画が延期、もしくは白紙となったケースが散見された。業界への影響が本格化するのは21年から22年とみられる。
高騰を続けた建築費や地価、人件費などへの対応や、採用難から売り手市場に転じた採用環境など、ウィズコロナ下での事業活動が求められる。福岡地区ではホテル建築に特化したゼネコンは見られないが、ホテルや店舗内装を主力とした企業への影響は今後さらに大きくなるだろう。受注先や官民の受注構成比などに注目しておきたい。
マンション業界はコロナ禍以前より業界環境の変化がみられていたが、より速いスピードで二極化が進むと思われる。「密」対策で各社が営業手法の変更を強いられるなか、予約制の導入やモデルルームのVR視聴で成果を上げた企業も見られた。リモート営業の仕組化や保有顧客の与信限度額などが勝敗を分けそうだ。
(つづく)
【内山 義之】
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